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悲痛な叫び声が、耳から離れない。
それはコレットのものでもあったし、つい先ほど、要の紋によって正気を取り戻したプレセアちゃんのものでもあった。

正気に戻るなり、彼女は病気の父親がいるのだと駆けだした。本当に、父親思いの優しい子、だったのだろう。けれど彼女を待っていたのは、腐乱してしまった父親の姿だ。
その時に発した悲鳴は、彼女が元通りになることがいいことなのかわからない、と言っていたタバサちゃんの言葉を思い出させた。だって、そうすれば知らないままでいられたのだ。父親の死も、自分の現状も、何も。

「手伝ってくださって、ありがとうございました」

ひとしきり泣いて、泣いて。少しだけ落ち着いたころに作り上げた墓に、父親が愛用していたという斧立てかける。
何も知らないままだったら、決して作られることのなかった、父親の墓。別れをきちんと済ませることは、絶対に悪いことではない。だから……戻らない方がよかったなんて、そんなことはないはずなのだ。
綺麗に土の中に埋めて、今度こそ安らげるようにとみんなで祈って。それから、プレセアちゃんはわたしたちに振り返った。

「いいってことよ〜」
「だいたいの記憶はあるんです……私、みなさんにご迷惑をかけていたみたいですね」
「プレセアのせいじゃないよ。それにしても、どうしてそんなエクスフィアをつけていたの?」

ゼロスくんとジーニアスの言葉を聞いてから、彼女はゆっくりとまばたきをする。
思い出そうとしているのだろう。年を取るのをやめた、と村の人は言っていたし、きっとずいぶんと前のことなのだ。彼女はしばらく悩んでから、私は、と目を伏せる。

「病気のパパを助けたかったんです……パパの代わりに働くために、斧を使えるようになりたかった。そしたらヴァーリという人がロディルを紹介してくれて……」
「やはりヴァーリか」

忌々しいとばかりにリーガルさんが表情を歪めた。
ヴァーリは確か、エクスフィア鉱山のトイズバレーで出会った人だ。あの人は仕事の関係以外にもプレセアちゃんと接点があったらしい。

「……それからサイバックの研究院に連れて行かれて……それでエクスフィアを」
「ふーむ。プレセアちゃんの実験は教皇の命令だったって、ケイトが言ってたよな。ということは? ロイドくん」
「あのロディルっていうディザイアンと教皇は、グルか」
「そういうことだーね」

なるほど。
確かに、コレットを追い掛けるディザイアンもといクルシスと、テセアラの繁栄を望んでいるだろう教皇の利害はぱっと見ると一致している。実際には、コレットを彼らに渡してしまうと女神の器になって世界は再生されてしまうので、教皇の望む結果が得られるとは思えないけれど。
騙されているのか、それとも、もっと他に協力することがあるのか。クルシスの輝石を生み出そうとするエクスフィアの実験がその一つ?
まだわからないことだらけだ。結局、わたしたちの敵はディザイアンでクルシスであるということしか、確実ではないのだ。