63-2

「しいな、頑張れ。オレたちがついてる」

ロイドの声援を受け取って、しいなはわたし達の顔をしっかりと見て。そうして、こくりと、一つ頷く。
遠目からでもわかるくらいに震えている体を、深呼吸をしてなんとか落ちつけて。かつての過去を振り払うように彼女が一歩足を踏み出せば、一際大きな雷鳴が鳴り響いて何かが降りてきた。
それは雷の塊だ。ウンディーネとは違う、純粋な雷の塊。青紫に見える球体が雷を纏って、ギョロリと目玉を向ける。
それは……ヴォルトはしいなを見つけると、ビリ、ジリリ、と何かが弾けるような音を発した。それが声なのだろうと直感するが、何を言っているのかはまるでわからない。……これが、リフィルさんの言っていた特殊な言語、なのだろう。

「昔とおんなじだよ! こいつはなにを言ってるんだい!?」
「落ち着いて! なんとかなりそうよ。私が訳すわ……我はミトスとの契約に……縛られる者。おまえは……何者だ」

動揺して悲鳴のような声をあげるしいなを、リフィルさんがピシャリと叱咤する。
どうやらリフィルさんが無事に解読できるようだ。大丈夫。何も話もできないまま、失敗したりはしない。しいなはそれだけでもだいぶ救われたようで、一度浮かんだ冷や汗を乱暴に拭って、再びヴォルトに向き直った。

「あたしは、しいな。ヴォルトがミトスとの契約を破棄し、あたしと新たな契約を交わすことを望んでいる」
「ミトスとの契約は破棄された……しかし、私はもう契約を望まない、ですって」
「どうして!?」
「人と関わりは持たない……だから……契約は望まない……」
「困る! それじゃあ困るんだよ!」

過去のトラウマが、彼女から冷静さを失っていたのかもしれない。
無理やりにでも力を見せてやるとばかりに札を取り出して戦闘の構えを取った彼女を見て、ロイドが慌てて声を張り上げたが、もう遅い。

「ダメだ! 無理やり戦うなんて、無茶するな!」

ピシャアアアン! と雷鳴が轟いて、何かを理解する前に体を衝撃が襲う。
痺れるようなそれ。いや、先に来たのは痛みだろうか?
ヴォルトの雷だと気付くより先に体が投げ出されて、わたし達はその場から吹き飛ばされた。

「みんなぁっ!」

しいなの悲鳴が聞こえるのに、それにすぐに答えてあげることは出来なかった。