63-4

「いくよ、ジーニアス!」
「くらえ、神の鉄槌!」
「「ゴッドブレス!」」

ジーニアスとわたしの複合特技が、ヴォルトに強大な竜巻となって襲いかかる。
力の塊である精霊は、とにかく詠唱も早いし強敵だ。それでも、まったく戦えないわけじゃない。力を、覚悟を見せられないわけではない。
自分にのしかかってくる風圧には耐えられないのか、動きが鈍ったその姿を見て、わたしはしいなの名前を叫んだ。。

「……しいな!」
「見ててくれ……みんな! はああああ! 風塵封爆殺!」

しいなの札がヴォルトを囲む。その身に纏う雷一つ逃さないとばかりに札を敷き詰めて、爆発して、そして……ヴォルトがついに、倒れた。
一度稲妻を走らせたかと思うとその姿は消え、そして改めて祭壇へと戻ってくる。
先ほどよりいくらか落ち着いた雷を弾けさせながら、彼はまたわたしたちにはわからない言葉を発した。

「誓いはたてられた……我の力、契約者しいなに預ける」
「終わった……終わったんだね……」

かくんと、しいながしゃがみ込む。
近くに寄ると、どうも緊張の糸が切れてしまったらしいが、それでも嬉しそうに目を潤ませている。そしてその手には、契約の証である宝石が握られていた。
やったね、と言えば、うん、と小さく返ってくる。
それだけでも嬉しくなって思わず乱暴に頭を撫でていると、突然、ヴォルトの隣にウンディーネが現れた。

「な、なに?」
「ふたつの世界の楔は放たれた……」
「待って、ヴォルトの方は通訳するわ。相対するふたつのマナは、いま分断された……どういうことなの?」

マナが分断?
全員が首を傾げると、ウンディーネが静かに話し出した。

「マナは精霊が眠る世界から目覚めている世界に流れ込みます。ふたつの世界で同時に精霊が目覚めたのは初めてのこと……これにより、ふたつの世界を繋ぐマナは消滅しました。やがて両世界は分離するでしょう」
「どういうこと? テセアラとシルヴァラントが切り離されるの?」
「そりゃいい! もうマナの取り合いはナシってことだーね」

なるほど! とゼロスくんの言葉に手を叩く。
ウンディーネとヴォルトの間にあったマナの流れというのは、おそらく、両方の世界を繋ぎ、マナを供給しあうためのラインのことなのだろう。
それが分断されたなら、テセアラとシルヴァラントを繋ぐものがなくなる……つながらない世界なら、もう互いにマナを取り合わなくていいのかもしれない。

「いえ、まだ全部ではないわ。シルヴァラントの封印は五つだった……最後の封印には精霊がいなかったから四つとして……そのすべてに対応する精霊を目覚めさせればいいのかしら」
「テセアラとシルヴァラント、すべての精霊と契約するってことですね」

精霊と契約して目覚めさせれば、マナの流れが分断される。
二つの世界がお互いを搾取しあう関係を変えるための方法として、やっと希望が見えてきたと、わたしたちは一様に目を輝かせた。

「封印にはふたつの世界をつなぐ役割があったわけだな」
「しいなさんとコリンのおかげですね。こうして少しずつわからなかったことがはっきりしていく……」
「いや、あたしなんて。みんなコリンのおかげさ。あたし、コリンに酷いこと言っちまったんだ。自分が不安だったもんだからつい、あんたじゃ力不足だ、なんて……謝りたくても、もうそれもできなくなっちまった」

俯いたしいなの肩を抱いて、今日はもう帰ろうと手を引く。説明を終えた精霊たちが姿を消して、わたしたちも里へ戻ろうと神殿の外へ歩き出そうとした時。ちりん、と足元で鈴の音が鳴った。
見れば、それは小さな見覚えのある鈴……コリンちゃんの首についていた鈴だ。小さな鈴が、足元に転がっている。
そっとそれを拾い上げて、しいなはぎゅっと抱き締める。そうして、大事に大事に、囁いた。

「コリン……ありがとう……」

コリンちゃんは、ちゃんと約束通り、しいなとずっと一緒だ。