65-3

「みんな、無事だったみたいだね」

なんとかレアバードに乗って安全な地面に降りてから、周りを見回していたしいながほっと息を吐いた。
見る限り、避難途中で怪我をした人はいなさそうだ。ただ、プレセアちゃんだけはまだ目を覚まさい。でも命に別条はなさそうで、木陰で寝かせた彼女の様子を看ていたリフィルさんの表情は険しくはない。

「大丈夫かい?」
「ええ。命に別状はないようだわ。あれだけのものを断ち切ったのだから、反動も大きかったのね」
「それにしてもあの男……ロディルはいったい何の目的でコレットを誘拐したというのだ?」

何か聞いていないだろうかと問いかけたリーガルさんに、コレットは少し悩んでから答えた。

「たしか、魔導砲の制御にクルシスの輝石が必要だとかって……これを使おうとして私をさらったんだと思います。でも、私のはダメなんだって……だから出来損ないだって」
「魔導砲って、聞いたことあるな……」
「ハイマにいたピエトロも魔導砲のこと、言ってたわよね」
「あ! プレセア、気がついたよ!」

ジーニアスの嬉しそうな声に、みんなの視線がプレセアちゃんに集まる。
彼女はゆるゆると瞳を持ち上げると、喜ぶジーニアスを見てから体を起こした。

「私……ここは……?」

ゆっくりと辺りを見回して、それからしっかりと立っていたコレットを視界に入れて、彼女は僅かに目元を緩ませる。

「コレットさん……無事だったんですね……」
「うん。プレセアのおかげだよ。本当にありがとう」

そう、ほんわりと笑ったコレットに、プレセアちゃんもにっこりと……本当に、心からの笑顔を浮かべた。
心を取り戻してから、いや、出会った時から初めて見た彼女の笑顔にわたしたちも思わず笑顔になってしまう。ジーニアスに至っては頬を赤く染めながら喜んだ。

「うわあ、プレセアが笑った! かーわいーい!」
「やはり……似ている」
「リーガルさん……?」

ぽつりと呟いた言葉に首を傾げる。
誰に似ているのだろうと彼を見上げるが、リーガルさんはゆるく首を振ってそれ以上は話そうとしなかった。

「さぁて、と。みんな揃ったし出発しようか、と言いたいところだけど。俺様さすがに疲れたなぁ。メシにしな〜い?」
「あんたねえ、このあとどうするかも決めないうちから、何言ってんだい!」
「わかってるさぁ。世界を二つに切り離すんだろ? ええ、ロイドくんよ」
「ああ。こっちの世界の精霊と契約しないとな」

そして、二つの世界を繋ぐ楔とやらを引き抜き、シルヴァラントとテセアラを引き離すんだ。
そう続く言葉にわたしたちは頷いた。二つの世界を切り離せれば、きっと世界はマナを搾取しあう関係から抜け出せる。
そう希望を持ったからだ。
それなら、としいなは少し考えて、先にテセアラの精霊と契約してしまおうと提案した。
今のレアバードはシルヴァラントに行けないし、この近くには土の精霊ノームがいる地の神殿があるらしい。
ちょうどいい、それでいいだろうとロイドがそのままリフィルさんに確認するが、彼女は珍しくぼんやりとして返事を返さなかった。

「先生?」
「え? ええ、それでよくてよ」
「姉さん、疲れてるんじゃないの?」
「そんなことないわ」

どこか上の空のリフィルさんを心配して、コレットやプレセアちゃんも疲れてるだろうからと今夜はここで野宿することになった。
コレットもプレセアちゃんも夕飯の頃にはすっかり元気になっているようで、きちんとご飯を食べている。
それはとても安心したけど、でも……少しだけ。コレットのオゼットでの痛がる姿を思い出して、でもそのことを聞ける雰囲気ではなくて。何かすっきりしない気持ちでわたしは夕飯のカレーを飲み込んだ。