66-1

「いきます! リーガルさん!」
「任せろ!」
「「十六夜天舞!」」

リーガルさんとわたしの複合特技が、剥き出しの岩を削るように精霊ノームへと打ち付けられる。
でっぷりとした巨体からにしては素早い動きで動いていたが、さすがにダメージが溜まっていたのだろう。上空からの攻撃に対応できず、ノームはそのまま倒れた。

「おまえら汚ねえなー寄ってたかってボコボコにしやがって。知ってるか? ミトスは一人だったんだぜー」

ノームの言葉に、さすがだと傍らにいたリフィルさんが呟く。まったくだ。いくら帰り道のためにと一軍だけが戦ってるとはいえ、こっちなんて五人がかりで戦ってるのに、それを一人で、だなんて、すごすぎる。
それにしても。テセアラの精霊との契約を進めよう、と最初に訪れた地の神殿だけれど、シルヴァラントにいたウンディーネの時に、ヴォルトにノームと、常に「契約者ミトス」の名前が追いかけてきているのは、なんだか不思議な感覚だ。
この契約者ミトスははたして、勇者ミトスと同一人物なのだろうか。それとも、名前だけが同じで、まったく別の人間なのだろうか。
勇者ミトス、契約者ミトス、そして……天使ユグドラシル。ミトスくんと同じ名前の人が三人、この旅に関わっているというのはなんだか奇妙な偶然で、けれど必然だと言い切るには情報が足りなくて、もやもやする。

「まあいいや。誓いをたてやがれ!」
「かーっなんだい、その態度。やりにくいねえ」

これまでの精霊と違ってどうにも軽いノリにしいなが頭をかきながら、けれどしっかりと契約の言葉を口にする。
そしてしいなの手に契約の指輪が落ちたのをきちんと見届けてから、みんなは肩の力を抜いた。

「無事に契約できたね」
「ああ。なんとかなってよかったよ」

無事に契約終了ということで、戦うメンバーを交代して出口へと歩き出す。
後ろにつくわけだから、少しだけゆったりとした歩調で歩きながら、わたしは先ほどの戦闘を思い出した。
自分でいうのもなんだけど、かなり動けたと思う。それこそエクスフィアのおかげなのだけれど。うん、ミトスくんと旅してた頃と比べたら、かなり戦えるようになった。怪我も減ったし、これは成長した、と自分を褒めてもいいくらいだろう。

「……よし、わたしもだいぶ動けるようになったかな」
「そうね。前よりもうまく立ち回れるようになっているのが、後ろから見てもわかるわ。頑張ったわね」
「えへへ……ありがとうございます」
「初めて会った時もエクスフィアを着けていないわりに十分動けていたと思うけどねぇ。なら、あたしも強くなったってことかな」
「あなたはドジさえしなければいいんじゃないかしら」
「す、好きでドジしてるわけじゃないよ!」
「あ、あはは……」

なぜか言い合いに発展したリフィルさんとしいなを見て苦笑する。
しいなが仲間になったばかりの頃はリフィルさんがすごく警戒していたから、今のこの距離感は仲良くなった、と言ってもいいと思うんだけど。リフィルさんからすると珍しいことに、ちょっと喧嘩仲間っぽいんだよね。
まあ険悪な空気になるわけでもないし、多少、こうやって言い合える相手がいる方が気も楽になるし、仲良しの形も人それぞれ。なんだかんだ仲良しなんだよなあと微笑ましい気持ちになってしまっていれば、同じように二人を眺めていたリーガルさんとプレセアちゃんもゆったりと笑った。

「リフィルとしいなは仲が良いのだな」
「そうなんですか?」
「軽口を言い合えるというのは、それだけ信頼しているということだ」
「お二人は信頼しあっているということなんですね。……私も、なれるでしょうか」
「誰か気になる相手でもいるのか?」
「はい。ナギサさんです」
「え、わたし?」

プレセアちゃんからの指名に、思わず目を瞬かせる。
ここで突然話題を振られるとは思わなかった。いや、光栄なことなのだけれど、心の準備をしていなかったので、なんだか変に照れてしまう。

「ナギサさんは、お揃いですから」

そうして続けられた言葉に、わたしははっとした。
前にプレセアちゃんと時間に置いて行かれちゃった同士でお揃いだね、と話したことがある。その時のことを覚えていて、同じような境遇同士だからわかることもあるだろうと。信頼し合える人になりたいと、そう選んでくれたのだ。
それはとても光栄なことで、嬉しいこと。全部を分かち合うことはできなくても、きっと、わたしたちなりの信頼を築くことは、できるはず。わたしもその気持ちに応えたくて、彼女の手をぎゅっと握った。

「……そうだね。お揃いだ。もう信頼しているつもりだけど、もっともっと、仲良くなろうね」
「……はい!」

ふわりとプレセアちゃんが笑う。
まだ固いけど、それでも笑顔とわかるものを浮かべられるようになった彼女に喜んでいると、いつの間にかヒートアップしたらしいリフィルさんとしいなの声が飛んできた。

「だーから! そういうのが陰険だって言ってるんだよ!」
「ああーら、陰険で結構。ドジな暗殺者の方が笑えなくってよ」
「……あちらはあちらで、お揃いだな」
「あ、あはは……はは」

仲良きことは美しきかな。ということで、うん。