「すべてを葬る、この一撃!」
「「クリティカルブレード!」」
ジーニアスの魔力を帯びた斧を振りかざして、プレセアちゃんがセルシウスの氷を打ち砕く。
美しい女性の姿をしていた精霊は氷のように砕け、そして再び祭壇に姿を現した。
「私の冷気も、お前たちの前では南風のようなものか……」
ふっと笑んでみせるセルシウスに、まったくそんなこたぁ無かったよと呟く。
冷たい神殿で氷の魔術を炸裂されたら、たまったもんじゃない。いくら戦闘で体を動かしたって、寒いものは寒いのだ。寒さで鳥肌はたっているし、気を抜くと体が震える。寒さで歯がガチガチ言う体験も初めてした。
こんなに凍えているのに南風のようなものか、と言われたって、全然うなずけない。精霊ジョークとかそういうのなんだろうか。精霊も結構、みんな姿も性格もばらばらで愉快なことも多いし、こういうジョークが定番だったりするのかもしれない。
「さあ、誓いをたてよ。私を使役できるような誓いを!」
「二つの世界がお互いを犠牲にしなくてもいい世界を作るために、セルシウスの力を貸してほしい」
しいなの誓いにセルシウスは頷き、その手に契約の指輪を落として姿を消した。
契約完了だ。みんなで緊張していた力を緩めて、誰からともなく笑顔を作った。
「セルシウスにはイフリート。イフリートと契約すれば、またひとつ楔が抜ける。これでいいんだっけ、先生。でもって、ノームにはイフリート、と。あり? イフリートが二人? へんだなー……痛っ! 思い出した、シルフだ!」
……イフリートとセルシウス、まではわたしでもわかるんだけどなぁ。
ちょっとシルフとノームが結び付かなくて迷ったけど、もちろん口にすることなく、リフィルさんに叩かれるロイドを見て苦笑した。
とにかくここは寒い。早く出ようと急ぎ足で外に出た時だった。
ゴロゴロと遠くで雷鳴が聞こえて、そちらの方に視線を向ける。
セルシウスの氷の神殿があるフラノールよりもっとずっと向こう。南の上空が厚く重たい雲に覆われているのが見える。雲は雷をちらつかせて、そして……その真下に向かって勢い良く落ちたのが、ここからでも見えた。
「なんだなんだぁ?」
「あれは、村のほう……」
「ああ、オゼットの方角だな」
「あの雷……なんだろう……ものすごいマナだよ。雷のほうから流れてる」
ジーニアスの呟きに、全員が一度黙り込む。
嫌な予感は、わたしたちも感じていた。
何かもやもやとした重たい気持ちがお腹の底で渦巻いて、ぞわぞわする。
「私、心配です」
「ああ、行ってみよう」
プレセアちゃんの言葉に頷いて、レアバードに乗り込んだ。