「ひどい……」
辿り着いたオゼットは、以前のような森の中にひっそりと佇むような静かな村ではなくなっていた。
あの、雷がきっと、ここに直撃したのだろう。その落雷が火を呼んで、森を焼いたのだ。瞬く間に燃え広がったのだろう火が村のあちこちで立ち昇り、木々は燃えて家も崩れ、生きた人の声はどこからも聞こえない。
……村が焼かれる光景を見るのは、これで三度目だ。古代戦争で焼かれたあの町。かつてディザイアンに襲われたイセリア。けれど、だからって慣れるわけじゃない。あの時の痛みも恐怖も罪悪感も全部一気にせり上がってくる感覚がして、久しぶりにぎゅうと服の下にある胸元のペンダントを握りしめた。
「こりゃ、生存者はいなさそうだな」
「落雷一つでこんなになるものなの?」
「……ヴォルトの時みたいだ。普通の雷じゃこんなにはならないよ」
しいなが目を伏せる。
ヴォルトと契約したと言っても、やはり彼女にとって、もう忘れられない……いや、忘れてはいけない出来事なのだろう。
かける言葉も、目の前に広がる惨状への言葉もわからなくて立ち尽くしていると、誰かいるかもしれないと他の場所を見ていたロイドの声が聞こえてきた。
「こっちに生存者を見つけた! ここも危ない……プレセアの家の方は無事みたいだから、みんなも早く避難を!」
生存者、という単語にわたしたちは顔を見合わせて、急いでそちらへと走った。
こんな状態のオゼットで生き残ったというその人は、だがさすがに気絶してしまっているようだ。プレセアちゃんの家の前で横たえられたそのシルエットの大きさ的に、まだ子供だろうか。
子供だけ生き残るのも悲しいかもしれないけれど、でも、生き残れたのならよかった……と、その姿をよく確認しようと近付いたところで、その子は薄く目を開く。
「おっ、気がついたか」
「はい……すみません。もう大丈夫です」
そうか細い声で答えて起き上がったその子に、わたしは言葉を失った。
「ひゃー。き、綺麗な子、だね……」
しいなが思わず声をあげる。
確かに綺麗な子だった。柔らかそうな金色の髪も、優しい色をした瞳も。線が細いせいか儚げに見える容姿も何もかもが、その少年が「綺麗」であると称するにふさわしい。
でも、違う。わたしが驚いたのは、彼が綺麗だったからじゃない。そんなんじゃない。
ありえない。ありえないのに、そんなはずないのに。
「ミトスくん……?」
彼は、未だ思い出の中で色褪せることのない、記憶の中のミトスくんにそっくりだった。