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オゼットが燃えたのは、自分がクルシスを裏切り、ロディルに協力したからだと、アルテスタさんは語った。
プレセアちゃんを使ったクルシスの輝石の研究は、教皇とロディルとが手を組んで、アルテスタさんやケイトさんに行わせていたらしい。これはクルシスに背く行為だ。だから、クルシスに対して反抗的なロディルごと、自分をかくまったオゼットに対してユグドラシルからの罰がくだったのだろうと、彼は語った。

自分を実験に使い、時間に置いて行かれ。ついには故郷まで奪われて。その直接の原因だと話すアルテスタさんに対してどうすればいいか、プレセアちゃんが悩むのは当然だった。
それでも、絶対に許さないといけないなんてことはなく、許せないものを許す必要はないとゼロスくんが声をかけてくれたことで、彼女も一応、心の区切りはつけたようだったけれど。
彼女の様子を看ながら、ここまで来たら徹底的に話を聞き出そう、とリフィルさんが提案する。自分たちに足りないのは情報だ。
プレセアちゃんもちゃんと全部聞きたいと言ったのを確認してから、わたしたちはアルテスタさんの家の中へと入る。再度話してもらった話は、こういった内容だった。

……もともとアルテスタさんは、クルシスに所属するドワーフだった。
ある時、直接でなくとも人の命を奪う仕事をするのが耐えられなくなって、逃げ出した。けれどロディルに捕まって、今度はクルシスの輝石を作らされることになったらしい。
クルシスの輝石、もといエクスフィアは、人の恐怖や悲しみ、闘争本能によって目覚める。だからこそ、人間牧場でディザイアンは人々を害する。決して殺すところまではいかない。恐怖と悲しみを煽るだけ煽って、寄生を促進させ、エクスフィアと同化してから殺す。
神子も同じだ。クルシスの輝石を持つ神子をディザイアンによって適度に刺激し、寄生と覚醒を促す。だからディザイアンは神子を殺したりはしない。神子を殺してきたのはレネゲードである、と彼は語った。なるほど。確かに彼らがディザイアンとは敵対しているという話とも繋がるし、彼らがコレットの命を狙ったことも、イセリアでフォシテスにボーダたちの話をしたとき、おかしそうに笑っていた理由も説明がつく。
……このようなことを行う組織に属して、自分の技術だったら救える人たちを見捨て続けるのが嫌だったからと逃げ出したのに。結局彼は、プレセアちゃんを犠牲にした。そのことをずっと、悔いていた。

そして、シルヴァラントとテセアラについて。
この詳しいことはさすがの彼も知らないようだが、クルシスに属する者の共通認識として、「クルシスの指導者たるユグドラシルは決して混じり合わぬ二つの世界を四つのマナの楔で結び、その中心に大いなる実りを置いて守護している」という情報があるのだという。
その二つの世界には、二極から行き来することができるらしい……と話したところで、ジーニアスが首を傾げた。聖地カーラーンも救いの塔も二つ、ミトスの伝説も同じ。以前から不思議だったけれど、いったいどういうことだろう。その二極を利用していて行き来した理由はなんなのだろう。
その疑問に、リフィルさんは仮説なのだけれど、と口を開いた。

「以前にナギサと仮説を立てていたの。古代大戦はシルヴァラントとテセアラの戦いであったのではないか、と」

それは、確か以前にエレカーの調整を頼んで、ゼロスくんの家に泊まった時に、彼女とした話だ。
今までの情報整理も兼ねて、彼女の意見が聞きたいと相談した時のこと。

「どちらの世界にも聖地カーラーンや勇者ミトスの伝承が残っていること、わたしがいた時代で、テセアラとシルヴァラントという二つの国が争っていたという事実から、おそらくそうじゃないかって話をしましたね。わたしはその時、勇者ミトスの時代の後に世界が滅んでしまって、それをユグドラシルが二つの世界として再生させたんじゃないかって思ったんだけど……」
「その可能性ももちろん残っているわ。けれど「二極」のひとつが聖地カーラーンであり、そこが二つの世界の扉だとしたら……もともと二つが別の世界だったのか、ひとつの世界が二つに引き裂かれたのかはわからないけれど、二つの世界を繋ぐ場所が停戦の地に選ばれるのは自然なことだわ」

まだ、この二つの世界が結ばれた時の詳しい事情はわからない。
決して交じり合わぬ二つの世界という形をユグドラシルが作り上げた経緯も、何も。
けれど、わたしの記憶通り。テセアラとシルヴァラントが古代に争っていて、その停戦の地を聖地というのなら。そこが、二つの世界を結ぶ場所であるなら。
現在、わたしたちから見える情報は、おおよそが綺麗に整理される。

「なるほど。二極についてさまざまな意見を聞いたが、あなたの説が一番輝いているように思えるな」
「他にはどんな意見があったのかしら」
「異界の扉……という伝説がアルタミラに伝わっている。そこが二極だとする者もいるようだ」
「……異界の扉……」

リーガルさんの言葉に、リフィルさんは再び考え込む。
まだまだ、すべては明かされない。けれどようやく、少しだけ視界が開けたような気がした。