アルテスタさんの話も終わった後。これからの方針としては、両方の世界にいる精霊との契約を済ませ、マナの楔を抜こう、ということで改めて決まった。
その過程で、どうにかしてシルヴァラントに移動する方法も見つけないといけないわけだけれど……そこは、まあ、二極という新しい情報も出てきたし、おいおい考えていくとしよう。まずは残るテセアラ側の精霊である闇の精霊のところに行かなくてはと決めて、地図を広げて精霊の神殿がある場所を確認する。
その過程で、ミトス少年をこのままアルテスタさんの家に預けることが決まった。最初、もちろん彼は遠慮したけれど。この家にいるのはドワーフであるアルテスタさんと、彼が作った自動人形であるタバサちゃんだけだから、今さら種族など関係ないと、彼は笑った。
……自動人形なんだ。タバサちゃんって。そのモデルになった人とかって、いるのかな。あまりにもマーテルさんにそっくりだから、気になってしまう。もしかして、もしかして、彼女の遠い子孫がモデルになっていたり……と考えて、それはそれでちょっと複雑な気持ちだなと首を振っておいた。
ジーニアスはミトス少年を初めてできた年の近い友達だと言って喜んでいるし、今のところ、順調、ということでいいだろう。
「地と氷の精霊との契約も済んだし…………今日はもう、ゆっくり休もうぜ。ミトスも体、大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫、です…………」
彼はこくりとうなずいてから、ちらりとこちらを見る。けれどすぐにかち合った視線に、彼は顔ごとさっさと目をそらしてしまった。
どうしたんだろう……なんて、考えるまでもない。つい数分前。彼を見て、彼とは別の人の名前を呼んだかと思うと突然泣き出したのだ。なんだあの女と思われるのは当然だ。
でも。その、心配そうにこちらを見る視線が。もう、あの頃の彼にそっくりで。困っちゃうな。また、思い出して、泣きたくなる。しかも、聞こえてくる会話からわかってしまった、もう両親はいないこととか、姉が自分を育ててくれたけど死んでしまったとか。家族構成もどことなく近くて、ああ、どうしよう、わたし、どうしよう。同じ名前はあちこちで聞いたけれど、そっくりさんに対する心構えなんて、してなかった。
「そいじゃまあ、とりあえず夕飯の支度でもしようや。ということで、ほらママ、あとタバサちゃんだっけ? 俺様と一緒に作ろ〜ぜ!」
どうにかして自然とこの空間から出なくては、と思っていると、突然ゼロスくんに肩を叩かれて、そのままぐいぐいと背中を押される。
いったいどうしたのだ。今日の料理当番はジーニアスなのに。
「え、今日の当番はジーニアス……」
「がきんちょは新しい友達に夢中みたいだし。いいのいいの。料理ってほら、集中するのにちょうどいいし、な」
だいたい男が作った料理なんてよ〜と話し出す彼は、たぶん、わたしのことを気遣ってくれている、のだと思う。たぶんだけど。
先日このメンバーは女より男の方が料理上手が多いな……と話したばかりだし、この言い訳が適当なものであるのは間違いない。ちらりと助けを求めるように他のみんなを見ても助けようとはしてくれないし。いつもなら一番に駆けつけてくれるしいなも、肩をすくめるだけで何も言わない。
……つまり、ゼロスくんだけじゃなくて、みんなに気を使わせてしまっている。
「姉貴とゼロスの料理かあ。結構俺、好きなんだよな」
「何よ何よ、嬉しいこと言ってくれるじゃないのロイドくん!」
「はい。ゼロスくんの料理も、ナギサさんの料理も、とてもおいしいです」
「この前食べたカレー、美味しかったよね。また食べたいな」
「プレセアちゃんにコレットちゃんまで……! 今日はカレー! 作ろうぜママ!」
うっきうきでもう一度肩を叩いてくるゼロスくんは本当に嬉しそうだ。褒められるのが好きというか、なんというか。道化ぶっているというか、なんというか。
みんな上手だなあって、勝手に頬が緩んで、力が抜ける。うん、大丈夫だ。大丈夫。わたし、今一緒に旅をするみんなも好き。みんなと一緒にいると、それだけでなんでもできる気がするし、変わっていける気もする。
だから、今はこの優しい気遣いをちゃんと受け止めよう。くいと手を引いてきたジーニアスに、わたしは笑ってうなずいた。
「そうだね。ボク、今日はナギサのご飯が食べたいかも。当番、交代してもらってもいい?」
「……わかったよ。でもゼロスくんはそのママって呼び方をやめて」
「え、だめ?」
「だめ」