「リフィルさん、心配ですね」
「そうだね……後方支援が専門の人だし、大丈夫かな」
隣を歩くミトスのつぶやきに、わたしも少しだけ視線を下げる。怪我をしても自分で治せるだろうけれど、そうは言っても後方で支援するのが得意な人だ。魔物に囲まれたら逃げるのも一苦労だろうし……移動にはレアバードを使っているからいくらか安心だろうけれど、どこで誰に会うかわからない。
わたしたちだって、途中まではジーニアスのレアバードにミトスを乗せて移動したけれど、アルタミラが見えてきたところで降りて、そこからは徒歩だ。この世界でもレアバードはやっぱり目立つし、一応教皇騎士団などに追われている身であるし。人の多いところでの使用は避けるべきだ、という判断である。
リフィルさんも、きっと同じように行動したとは、思うんだけど。そもそも、どうしてアルタミラへと向かったのだろう。二極の話を聞いてから、というゼロスくんの推測通りなら、アルタミラの近くにあると言う異界の扉を調べたくなったとか?
でもそれなら余計、一人で行く必要はないと思うんだけど……
「ところで、どうしてナギサはミトスの手を繋いでいるの?」
ふと、コレットにそう問いかけられて、きょとんと首を傾げる。
手を繋いでいる、とは。ふいと隣にいるミトスを見て、それから自分の手を見る。あれ、本当だ。わたし、ミトスの手を握っている。手を引いて歩いている状態だ。
いつの間に。ああでも、そっか。わたし、ミトスくんとはよく手を繋いで歩いていたから、その時の癖が出ちゃったのかも。
わたしは彼と顔を見合わせてから、ぱっとその手を離した。
「ごめん、ミトスくんのノリで繋いじゃった」
「あ、いえ……大丈夫です。えっと、ボクも、姉さまを思い出しちゃって……」
「なるほど。だから繋がれ慣れていたんだね」
平然とした顔でうなずいてみせるけれど、内心は「やっちまった」で一色である。
またミトスとミトスくんを重ねてしまった。申し訳ない。確かに、代わりに約束をして、それを叶える代わりに泣かないでと、昨日言われはしたけれど。別にそれは、彼を完全にミトスくんの代用品にしろと言っているわけではないのだ。
ミトスという初めて出会った少年と、新しい関係を築いていこう、という意味なのに。いきなりこんなことをしてしまって、ものすごく罪悪感。それに、もう死んじゃったっていうお姉さんのこと、思い出させてしまったのも、申し訳ない。
でもこんなところで泣くわけにはいかないので、呻くだけに留めて表面上はなんとか取り繕う。
「なんか、すぐ人と手を繋いじゃう癖があって……ごめんね」
「えっ、俺、一年暮らしてた時も手を繋いだことなかったけど」
「私はいっぱい繋いだよ〜」
「コレットは手を繋ぐだけじゃなくて、頭を撫でたり、膝枕とかもしてもらってたよね」
「うん! とっても落ち着くよ」
ロイドが首を傾げるのに連動してコレットがはい、と手を挙げて、さらにジーニアスがだから村の……と言葉を切ったのを見て、ああなるほどと頭を抱えた。
村でわたしのことをおばあちゃんみたいだなんだと言ってたちびっ子がいるって言っていたのを思い出す。どこでそんなことになったんだと思ったけれど、コレットに対してあれこれ世話を焼いてしまった姿が、孫を構いたがるおばあちゃんに見えてしまったのかもしれない。本人はお母様みたいって言ってたのに。どうしてみんなおばあちゃんにするんだ。
いやでも彼女、すごいこう、構いたくなるじゃない。仕方ないじゃない。そうロイドに言えば、確かにコレットは目が離せないし、そばにいないとって思うよな、と返してくれたので良しとした。
「ごめんね。ミトスくんとミトスは別人だってわかってるんだけど、こう、なんか手が勝手にね……いやだったらちゃんと言ってね」
「いえ……」
それから改めてミトスに謝れば、彼は赤らんだ頬で気にしないでとはにかむ。
ミトスはいい子だな。でも、あんまり聞き分けがいいと心配だな。わたしのことちゃんと監視しててねとジーニアスに言えば、別に気にしないと思うけど、と笑われた。