13
遠く、遠く。
遠くから彼らを見る瞳は、暗い色をしていた。
色素は薄く明るく見える。それなのに、たたえる光はとても暗く…彼は、クイラは吐き捨てるように呟いた。
「覗き見とは趣味が悪いぞ、と機嫌が悪いオレはさらに不機嫌になる。」
そう言った彼の近くには誰もいない。姿は何もなく、ただ彼と、彼の頭に乗っている人形がいるだけだ。
それでも彼は確信を持って呼びかけ、確信を持って話す。ずっと視線は感じていた。ずっと力は感じていた。きっとわかっているのは、彼だけだけれど。
「つけ狙うのは構わない。思っていることはみんな同じだ。だからお前だけはダメだなどと言うつもりはないと断言しておく。だが、と続けるぞ。」
アリスを殺すのは当然だ。そう言っておきながら、それでもクイラはそれを否定する。
それは駄目だ。きっと、駄目だ。出会っては、見ては、認めては、駄目だ。駄目なのだ。好きか嫌いかではなく、駄目なのだ。
それを伝えきるための言葉は見つからない。それでもいい。伝えたいのは、大事なのはひとつだけだ。
「最後にアリスを殺すのは、このオレだ。」
そう宣言すれば、感じていた何かはそっと息をひそめた。消えていく感覚にクイラはまた舌打ちをして、再び彼らのいる方向を見る。
ずっと待っていた。こなければいいと願いながら、ずっと待っていた。
「…百回だろうが千回だろうが十万だろうが…何度でも。何度でも絶対にオレが殺してやるとオレは誓ったから、だから…」
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