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「ってなわけで、次はあそこの船でもやるかー。」
アルヴァートが船上でアーリアと武器を交える少し前。
でーんと食事後の席で自分で効果音をつけながら宣言したアルヴァートに、机の上に座っていたカタリーナははあ?と顔を歪めた。
「意味がわからないんだけど。」
「最近ご無沙汰だったでしょー。そのくせ暴れる事はしてたからね。だから来ちゃったぁって感じ?」
「だからその喋り方気持ち悪い。」
ゲシッとライノルズの椅子を蹴り飛ばしながらも、カタリーナは律儀に自分の双銃を取り出して準備を始める。
なんだかんだ反対意見を出す気はないらしく、言われた通りにするカタリーナにその場にいたほとんどが苦笑を漏らした。
それから皆一様に己の準備を始める。
そんな中で、アルヴァートはちらとラルドを見てライノルズを呼んだ。
「ライノルズ。」
「はいはい。」
アルヴァートに言われて、ライノルズはぐいとラルドの手を引いた。
相変わらず体を強ばらせるラルドに、だが気付かないふりをして部屋から出て、ずんずんと廊下を進んでいく。
「あ、の、」
「悪いねラル坊。船長のお願いだからさ。あんまりそういうの見せて怖がらせたくないんだって。今更だよね。」
言いながら立ち止まったライノルズは、ちらと窓を見た。
つられてラルドもそちらを見れば、豪華客船という言葉がよく似合う大きな船がすぐ近くを走っている。
あれが狙いの船なのだろうか。
少し背伸びをして窓の外を眺めていれば、ひょいとライノルズが体を持ち上げてくれる。
「…アーリア・ツィーツィラっていう海軍のお偉いさんがね、船長を捕まえたいって罠を張ってるんだ。だから今回はちょっと激しいから余計なんだろうね。」
だからここからで我慢してねと浮かべた笑みにはいつもの胡散臭さはない。
改めて窓の外を見る。
遠目だが、音と合わせて皆中に入って行ったのだろう。
何度か耳にした事のある戦闘音。
ちらちらと見える、戦うみんな。
「大丈夫だよ。」
ポン、と優しく頭を撫でられる。
敵意は無いとわかっているのにどうしても身構えてしまうが、ライノルズは何も指摘しない。
そして、まるで彼の考えがわかるかのように…彼の中にある不安を、簡単にやんわりと否定した。
「船長もカタリーナもディランも…みんな死なないよ。」
死なないよ。
それは言葉にすればたった一言。あっさりと流されるような言葉。
それでもラルドにとってそれはとても大きな言葉で意味を持っていて。
だから、彼はギュッと自分の服の裾を握り締めた。
「…」
「あ、こら、」
タッとライノルズの腕から逃れて走り出す。
大したスピードではないが、追いかけようとしたライノルズはビクリと動きを止めてそれを見送った。
左目にかかる前髪をかきあげて、困ったなぁとため息をつく。
きっと彼は甲板に出たのだろう。
ごめんね船長と心の中で呟いて、ライノルズはそこに立ちすくんだ。