100
「グローカス大尉!AAA船は未だに操行可能なようです。」
「意外にも弾ぁ積んでますよ!」
名義上はシェントが、だが実際の使用度から言えばエルトゥリが所有している船、ライク。
現在ディランが動かすAAAの船に向かって攻撃を繰り返すライク内に、複数の戦況報告の声が飛び交う。
「慌てるな。向こうはここら辺が限界みたいだ。今の距離を保ちながら、魚雷なんかで確実に機能を奪って。」
「魚雷準備整いました!」
「少将の命で弾は余分に持って来ている。構わず打て!」
普段からは考えられないほど毅然とした態度で命令を飛ばすのはエルトゥリだ。
冷静に指示する彼には、普段シェントなどと会話する時のような不思議な会話の噛み合わなさのようなものは無い。
「…今あれは動かしてるのは誰だ?本当に意外なくらい手ごわいな。」
「今あれに乗ってる中で有名なのは、カタリーナ・スヴァイくらいですよ。」
「オシリス軍曹の話からして有り得ない気がするが…」
「あ、軍曹で思い出した。確かディランがいるんじゃなかったか?大佐と同じFRの最終被害者の一人の!」
ひらめいた!と笑顔を浮かべた軍人の一人に、エルトゥリはサッとマレステラの塔の方を見る。
瓦礫の辺りにいるだろうアーリアが、オシリスを使って昔に悪名高く存在していた海賊FRを探している事は、シェントの管轄内…つまりは彼女と同じ所属の者はほとんどが知っている。
彼女がその“ディラン”の存在によりAAAを担当することを決めたということも、有名な話だ。
「あー、ならその流れで海上戦の立ち回りとか覚えてるかもですね。」
「…ふぅん…」
少し悩むように黙り込んで、エルトゥリは静かに息を吐いた。
ディラン。
オシリスと共に調べている軍人から聞いた話では、調べても調べても彼に関する情報はほとんど見つからないという青年。
前にシェントと共にモネウィルドに行った際に伺い見て、どこか…どこか、ルミナリエに似た印象を受けた青年。
「…自分は、そういうのに弱いな。」
「え?」
「面白い。」
対峙するディラン達海賊の船を視界に入れて、エルトゥリはぐ、と顔を引き締める。
そして、きっちりと帽子を被り直すと、彼は微かに笑った。
「沈めろ。」