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「鐘が…」
鳴った、とフォルキシアは呆然と呟いた。
もう何年も鳴らなかった鐘。
ユーマイオルド領主さえ聞いた事の無い鐘の音。
それを鳴らしたであろう人物を思い浮かべて、フォルキシアはぼんやりと笑った。
「姉さま!」
瓦礫の前に、声が響く。
ガラガラと音を立てて瓦礫をどかそうとする姿が、一つだけ見える。
…オシリスだ。
結局瓦礫に埋もれる事の無かった彼は、この下に確実にいるであろうアーリアに向かって叫びながら、なんとかこれをどかせないかと動き回る。
「姉さま…!」
「あんだぁ?お前もいたのかい。」
「っ!?」
聞こえた声に、ほとんど反射的に武器を構えようとする。
だが、それがカタリーナだと確認するや彼はひとつ舌打ちをして、すぐに瓦礫に向き直った。
「なんだクソ女。お前に付き合ってる暇なんか無いよ。」
「こっちだって無いさ。つか、あんた一人でこれ動かせると思ってるのかい?」
「やらないよりはマシだ。」
「ほんと、犬だよお前。」
「犬でいいよ。それで姉さまの傍に居れるんだったら幸せだ。」
山積みになった瓦礫を前に力を込める彼の姿を、カタリーナは無表情に見つめる。
彼も、瓦礫の下にいるであろうアーリアだけを思って無表情に言葉を紡ぐ。
「ぼくの居場所はここなんだから。」
それだけ。
それだけ言った彼に、カタリーナは深く息を吐くと、無言で隣に立った。
そして、オシリスと一緒に瓦礫を掴んで、ゴツリゴツリとそれを僅かにだが動かしていく。
「なんだよ、お前の力なんか…」
「勘違いすんなバーカ。アタシはアタシの仲間を迎えに来ただけだよ。」
「バカとはなんだ!」
「アタシの居場所はあの船の上なんでね。仲間が欠けたら困るんだそれくらい解れバーカ。ケツ。」
「〜っ!」
オシリスは何も言わなかった。
だからカタリーナも何も言わなかった。
ただ二人、ただ自分の居場所の為に、瓦礫を動かした。