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「…どうして、私だけ置いて行ったのですか。」
静かに、アーリアはそう問い掛けた。
先程も問い掛けたそれに答えらしい答えは返ってこなかった。
それでも再び問い掛ける。
ライノルズが憎いだとか殺したいだとかそんな物はついでで言い訳なのだ。
それを知りたくて追いかけていただけなのだ。
「どうして、私じゃなくてディランだけを連れて行ったんですか。おかげで私はこのザマですよ。あなたを追いかけて追いかけて追いかけて…その為に海軍に入って、馬鹿みたい。あなた、あなたさえ、いなければ。」
知らなければ、こんな人生になんかならなかった。
こんな道を歩く必要なんかなかった。
血の向こうに、あなたを探す必要なんか、なかった。
はたり、はたり、零れるのはなんだろう。
ライノルズの頬に落ちる水滴はなんなのだろう。
「どうして今でも、あなたをこんなに好きでいなきゃいけないんですか…っ」
愛してるんです、と彼女は呟いた。
泣くように呟いた。
落ちてくる水滴に、ライノルズはひとつ息を吸う。
いつかヴェルディに幸せかと問われた事を思い出す。
ああ、幸せだよ。
僕が台無しにした彼女よりずっと。
今有る幸せに気付けない彼女よりずっと。
「…それでも、今の君には今の居場所がある。もう、僕だけじゃない。僕にも、君だけじゃない。」
「そんなことない…だって、オシリスにだって、私は何も出来ない。奪う事しか出来ない。あなたとじゃなきゃ、」
「君が気付いていないだけだよ。幸福はそうだって認めないと幸福になれないんだ。もう一度よく見て、それでもまだダメならここにおいで。でも大丈夫だ。君はもう“海賊FR”のオモチャだったアリアちゃんじゃない。」
ガコン。
重い音を立てて、光が入ってくる。
自分や彼女の仲間の声が微かに耳に届く。
ライノルズはようやく見えたアーリア…弱々しい少女の頬を優しく両手で包んで、少し背伸びするようにその額に口付けた。
「だからさよなら、アーリア。」
これからは、ただの少女になりなさい。
アーリア・ツィーツィラとして、幸せになりなさい。
君が君でいる事が、幸せな事なのだと気付いてください。