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「あっ」


ジャキンッ
あのハサミの音が響いたのは、今から何年前の事だっただろうか。

まだ海軍に入りたてだったシェント・リズナートは真っ青な顔でハサミを握る14歳の少女に、深い深いため息をついた。


「…ルナ…」

「ごっごめんなさいおじさま!手が、滑ってしまいました…っ」

「いや、いいけどよぉ…」


見事に斜めに切れた前髪を弄って、目の前の自分の姪…既に他界してしまった姉の娘であるルミナリエをわざとらしく見る。

彼女を目に入れても痛くないほど可愛がっているシェントとしては、この失敗すら可愛らしいものなのだがつい苛めてやりたくなるのも本心なわけで。

ルミナリエと違ってそれをきちんと理解していた幼なじみの…当時の彼はまだ海軍には入っていなかった…エルトゥリはわざとらしくシェントをからかった。


「大丈夫。シェントはそれくらいがカッコイい。」

「無責任な事言うなぁエルトゥリ。」

「きっと明日みんなの笑い物。楽しみ。」

「エル、お前貶したいのかフォローしたいのか自分が楽しみたいのかどれだ?」

「…全部?」

「全部かこのやろぅ。」


軽く小突くも、エルトゥリは何も気にならないと持っていたクッキーを頬張る。

相変わらずマイペースだと諦めれば、ルミナリエは今にも泣きそうな顔でシェントの前髪を見詰めていた。


「ごめんなさいおじさま…ルミナリエが無理言ったから…」

「いいっつの。これはこれで気に入ったから暫くこれでいてやらぁ。」

「おじさま…」


グッと力んで、ルミナリエは零れそうだった涙をこらえる。
それから、いつもの屈託の無い笑顔を浮かべてエルトゥリを呼んだ。


「エルお兄さん、おじさまはやっぱり凄いです!」

「うん、そうだね。自分には真似出来ないよ。」

「エルまじ黙ってろ。」


笑う笑う、愛しい姪っ子。
背中に翼を刻んだ、幸福の子供。

守りたかった。
彼女の幸福を、守ってあげたかった。