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事切れたフォルキシアを囲んで、三人は静かに潮風に身を当てた。
アルヴァートはゆっくりと、フォルキシアの傍らに座っていたラルドの頭を優しく撫でて、そのままヴェルディの方へと歩く。
「アルヴァート、ラルドくんの前でやるなんてえかったのん?」
「別に初めてじゃないしな。」
「ほぉなん?」
「船長めっけ!」
嬉しそうな声に振り向けば、足を引き摺るライノルズを肩に担いだカタリーナがそこに居た。
無事だったのか、と互いに僅かに顔を綻ばせて、それからすぐにいつもの軽いノリで笑い合う。
それからカタリーナ達はちらとフォルキシアに気付いたが、ラルドが立ち上がるのを見て特に何か言うことはしなかった。
アルヴァートも特に何も言わず、明るい声を作る。
「さって、そんじゃとっとと逃げますかー」
「ほうじゃな。うち、船に合図送ってくるわ。」
「おいオヤジ、もっとちゃんと立ちな。」
「やだリーナちゃん、そんな激しくしないで、壊れちゃう…」
「気色悪い!」
ベシンっと思わず力一杯頭を叩きながらライノルズを床に落とす。
つい先程まで瓦礫に埋まっていた彼を労る素振りは全く無い。
それに堪えきれず、ラルドは思わず小さく破顔した。
アルヴァートは良かった…と本当に小さく呟いて、ついと視線を逸らす。
別に彼が来てからも人殺しくらい何度もしていたのだが、今更になって引け目を考える。
馬鹿らしいなと思いながらふと遠くを見て…アルヴァートは、表情を強ばらせた。
一つの黒い影が見える。
太陽に反射して僅かに見えるそれは、間違い無く銃を構えていて…その人物も、その銃口の先にある者も瞬時に気付いて、アルヴァートはその人物の腕を勢い良く引き寄せた。
「…ライノルズ!」
「…さよなら。私が追いかけた日々。」
銃声は、わずかに聞こえた程度だった。
それでも、大佐にまで上り詰めたアーリアは、正確にライノルズがいた場所を撃ち抜く。
ライノルズがいた…今はアルヴァートが立つ、その場所を。
「…アルヴァート!」
呼んだのは一体誰だったか。
それを認識する前に、ただ衝撃のままに彼の体は突き飛ばされ、耳に大きな水音を響かせた。