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「ったく、あのクソ野郎ども…」
ぶつぶつと呟いて、彼女は乱暴な足取りで歩いて行く。
カナンの街は、比較的寒いオーラムオルド領のせいかみっちりと船が連なり、布地で覆っている部分も多く存在している。
その中でひとつだけかなりの高さを持つ廃船の塔を睨み付けて、先程の同年代の少年達とのやり取りを思い出す。
ガキ大将を決める戦いだ!と言って、10歳の自分よりひとつ年上の少年が殴りかかってきたのはほんの数分前。
ざけてんじゃねぇぞと返り討ちにしたのはその数秒後。
あまりの瞬殺に周りの少年達が泣き出したのもその数秒後だ。
彼は悔しさのあまりに「お前なんか人魚に呪われてんだ!」と言ったその少年の腹を再び蹴り飛ばす。
その時を思い出してまたイライラして、彼女はそれを晴らすように近くの物を蹴り飛ばす。
道端に置いてあるそれは誰かの私物だろうが、後で直せばいいだろう。蹴り飛ばす。
「っあームカつく!どうしようがアタシの勝手だっつの!」
「だっ!」
ゴツンという音と小さな悲鳴が聞こえて、彼女ははたと我に返った。
視線の先、物が倒れた所に14歳ほどの少年がうずくまっている。
瞬時に自分が蹴り飛ばした物が当たったのだと理解して慌てて駆け寄る。
「あ、悪い。大丈夫かい?」
「ああ、まあ…」
もぞりと起き上がった彼は赤いコートを羽織っていて、よいしょと飛んでしまったらしい帽子を被る。
それは彼にはまだ大きいらしく、ズルリと彼の顔半分を覆ってしまう。
それがなんだかおかしくて、彼女は思わずぷすりと噴き出した。
「なんだいその格好?見ない顔だねぇ。」
「なんだよ、笑うなよ。」
「悪い悪い、あっははは!」
むす、と膨れる彼に、彼女は更に笑い声を上げる。
ひとしきり笑ってから、再びごめんごめんと手を振って、す、と手を出した。
「アタシ、カタリーナってんだ。あんたは船乗り…にしては若いか。」
「いや、船乗りだぜ?」
自分と4つほどしか変わらないのに?と問えば、彼はニカッと笑ってみせた。
「俺はアルヴァート。海賊の船長やってんだ!」
これが、出会い。