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その後、勢いで酒まで開けた彼らはしばらく騒いだ後、ぱったりと酔いつぶれてしまった。

一人絶対に飲むまいと頑なに口を閉ざしていたラルドも当然酔っ払いには絡まれたのだが、なんとか乗り切った…と珍しいくらいの達成感に息を吐く。

最初に潰れたディランの倍以上飲んでいたが、この四人の中では弱い部類に入るらしいアルヴァートも、ライノルズよりも強かったカタリーナも二人してラルドに絡んでくるのだから今にも泣きそうだったんだぞと、気持ちよさそうに机に突っ伏すアルヴァートの頬を指でつついてみる。

始めて触った彼の頬は案外柔らかく、少し楽しくなってチョイチョイとつついていれば、後ろからヴェルディのくすくすという笑い声が聞こえた。


「みんな寝てしもうたのぅ。」


そう笑いながら最後の食器を片付け、眠りこける子三人にまたぷすりと笑う。

彼女は意外にも酒に強いらしい。
他の人よりもずっと飲んでいたにも関わらず顔色一つ変わっていない様子に思わず感心してしまう。


「でも良かった。みんなちゃんと帰って来たし、リナちゃんはすっきりしたみたいやし…何より、ラルドくんが新しく家族になったみたいやし!なぁ知っとる?海賊から嫌な事を抜くと家族になるんやで。じゃけぇ、ラルドくんもモネウィルドの家族っちゅうわけやって。」


…アルヴァートにそれを言ったのは彼女だったのか。

そう冷静に思いながら、家族、と小さく呟く。
嬉しそうに笑って部屋の奥に毛布を取りに行った彼女の言葉がなんだか胸をこそばゆくくすぐる。


「それだけじゃのうて、アルヴァートの特別みたいやしな。」


そっとかけられた毛布は柔らかく彼らを包む。
その姿はなるほど、確かに母親のようだった。

ヴェルディは内緒やで、と指を口元に立てて、アルヴァートの手をとる。
そしてそれをヒョイと動かすと、その手を使ってラルドの帽子を奪った。


「ここにはリナちゃんとディランくんとおっちゃんしか居らんやろ?まぁみんな自分の家があるからっちゅうんもあるけど…アルヴァートが自分でここに入れるのは、特別な人だけなん。」


そのまま自らの手でラルドの頭を撫でる。
アルヴァートともディランとも、船の誰とも違う柔らかな手。

だが、浮かべる笑顔はみんなと何も変わらない、あの優しい笑顔だ。


「じゃけぇ、ラルドくんは特別!そんな風に思って貰うのも思えるのも、むっちゃ幸せな事やね。」


嬉しい、と素直に思った。思えた。
自分も彼らの家族になれたという事も、同じ場所にいられるという事も素直に嬉しいと思う。

ヴェルディから帽子を返して貰って、それをぎゅっと被る。
顔が見えなくなるくらいに被り込んで、ラルドはポツリと呟いた。


「…おれも。」


幸福の子供が幸福を与えるどころか幸福にしてもらうだなんて、どこか滑稽な話だけれど。
自分を拾った海賊の言葉に何度も嬉しくなるだなんて、どこかおかしな話だけれど。


「おれも、特別って、思う。」


それでもどうしても零れてしまう笑顔を、抑える事なんて出来なかった。