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「お、アレなんか丁度いいんじゃないか?」


とりあえず変態呼ばわりだけは謝ろうと戻って来たラルドだが、やけに上機嫌なアルヴァートと船員数名が双眼鏡やら望遠鏡やらを覗いているのを見て首を傾げる。

格好がどこか戦闘モードのように見える事にも首を傾げて、てててとアルヴァートのコートにしがみついた。


「…なに、してんの?」

「ああ、いや、ラルドの可愛い言葉聞いたらなんかテンション上がったから、ちょっとその辺の船でも襲おうかと。」

「なんでそうなるの?」


思わず呆れてしまうが、彼らにとっては久々の海賊業という事で皆ノリノリな様子だ。
準備もそこそこにラルドの頭を一度撫でてから船に向かうアルヴァートの背中を見送って、そういえば言いそびれてしまったとぼんやり外を見た。

そこに、ラルドがいるにも関わらず海賊業を控える事はせず、ヴェルディと共にモネウィルドに残るようにも言わなかった男を無意識に探して、かあっと頬を赤らめる。

どれだけ懐いてしまったんだと、少しだけ恥ずかしくて悔しくなる。
あんなにも思っていた事を思わなくなった事に、どうしても戸惑う。


「…っ!?」


と、その時船が大きく揺れた。
何かにぶつけられたような音が響き、戦闘音がやけにはっきりと聞こえるようになる。

一体何が、としゃがみこんでいた体を起こして、どこかにいるはずのライノルズを探そうと走り出そうとする。

だがその足は、前からやって来た影を見て止まる。


「…ふむ、なんとも上手い具合に遭遇出来ましたね。」


前に、自分のすぐ傍で聞いた事のある低い女性の声。
黒に映える赤い色。
スラリと抜かれた銀色の刃。

その影はラルドを見てにっこりとどこか機械的な笑顔を浮かべて、そして一つ一つ、強調するように言葉を発した。


「お久しぶりですね、人魚。あなたを“保護”しに来ました。」