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アルヴァートとラルドの会話を邪魔する者はいなかった。
アーリアを起こしたシェントはゆっくりと弾かれた武器を拾って二人を見る。

彼の言葉を上手く理解出来ない…いや、するのを拒むかのような表情で、アルヴァートはラルドに言葉を投げかけた。


「…な、に、言ってんだよ…ほら、一緒に帰るぞ。」


そう再び伸ばした手も、後ろに下がる事であっさりと避けられる。
その反応に思わず動きを止めれば、ラルドひ俯いて「…や。」と小さく呟いた。

小さな小さな、だがはっきりとした言葉。
どうすればいいのかわからずにいれば、ラルドはやがて胸を手を組んで、吐き出すように言葉を発し始めた。


「お、れは、もうあんたとなんか、居たくない…どうせいつか手放されるなら、今度はおれがこの手を離す。あんたが拒絶しないなら、おれがする。もう嫌なんだ、こんな、まるで…」


幸せごっこだ、と、彼は言う。
そんなのいらないんだと、彼は言う。
終わらせたいだけなんだと、彼は言う。
全てを拒絶するような声で、叫ぶ。


「…っあんたなんか、大嫌いだ…!」




「だったら泣くなよ。」




ラルドの言葉に、アルヴァートはそう返した。
真っ直ぐにラルドを見つめて、俯くラルドに真っ直ぐ言葉を投げかける。


「大嫌いだって言うなら、なんで泣くんだよ。なんで泣きながら言うんだよ。」


ぽたりぽたり、床を濡らすそれに、微かに混じる嗚咽に、そっと手を伸ばす。


「泣くくらいなら一緒に帰ろう。一緒に居よう。俺はずっと、ここに居るから。ラルドと一緒に居るから。」


だが、その手はやはり届かなかった。

彼と彼の間に割り込んできたシェントとアーリアが、二人を離す。

シェントはに、と笑って、拾っていた銃をそっとアルヴァートの手に戻した。


「泣いて嫌がったら手放すんだろ?」

「…ってめぇ、」


トン、と、ラルドがアルヴァートの体に触れる。
だがそれはアルヴァートをあっさりと海に突き落とす為のもので、彼をこの軍船から退場させる。

海に落ちる最中、やっぱり泣いているラルドが視界に入って、アルヴァートは悲しげに目を細めた。


「それではさようなら、AAA。…ホルス様が、お待ちですので。」


最後に聞こえたのは、アーリアのわざとらしい声。

こうして、二人の旅はあっさりと終わりを告げた。