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「ってなわけでどうだ!可愛いだろ!」
どんっと擬音をつけたくなるような勢いを持って、アルヴァートは甲板掃除をしていた自分の船員達の前に立った。
ラルドを紹介したくてたまらないらしい。
もう20を超えてしまっている事を忘れてしまうぐらいに目を輝かせる船長に、皆デッキブラシやらに体を預けて大声で笑った。
その中にはディランの姿もある。
「さすがセンチョらね!れもお肉は結局いつもと量同じかー。」
「今日はいつもより多くなるって期待してたんすがねぇ。」
「船長、自慢して回ってるんですかい?」
「まあな。特にカタリーナには全力で自慢に行くつもりだ。」
ハッハッハッと笑うアルヴァートのコートの裾を握り締めて、ラルドは変な人達だと体を隠した。
陽気な雰囲気だが、陽気過ぎて慣れていないラルドは戸惑ってしまう。
「じゃあ改めて。オレはり、り、で、ディランっていうんらぞ。」
「ほら、自己紹介。」
ポンと背中を叩かれて、ラルドはおずおず船員達の前に顔だけを出す。
自分よりずっと大きな男達の群れに思わず体が竦んで目が潤むが、なんとか零すのを堪えてぼそりと呟いた。
「…ラルド。」
「ラルろ…ラルか!よろしくな!」
やっぱり発音出来ないらしい。
ディランを押しのけて、陽気な船員達は自分はおれっちはと続けて自分の名前を名乗った。
正直覚えきれないとラルドは更にぎゅううと裾を握り締める。
「ちょっとあんたらー?何をそんなに盛り上がってんだい?」
「おう姉御!ついに姉御が来たぞ!」
「はぁ?」
色めき立った彼らに誘導されるように視線を動かせば、どうやら見張り台にいたらしいカタリーナが梯子で降りてきた所だった。
彼女はアルヴァートの後ろに隠れるようにするラルドに気付くと、ほんの少しだけ残念そうな顔をする。
「おやなんだい、攻略したのかい。じゃあ肉は何時も通りか…」
「お前ら揃って肉ばっかだな!」
思わずそう言うが、カタリーナはそれを無視してラルドの隣にしゃがみ込む。
それからにっこり、笑ってみせた。
「アタシはカタリーナ・スヴァイ。よろしくね坊や。」
「ほらラルド、行け!」
「行けってセンチョ…」
とんっと背中を押すが、たくさんの知らない人間(恐らくギリギリでアルヴァートも含まれる)に囲まれて緊張がピークらしい彼は、もぞもぞとコートに顔を隠すだけでなかなか言葉を発しようとはしない。
それでも笑顔で待ち続けると、やがてひょっこりと顔を出して、今にも泣きそうな表情でカタリーナを見上げた。
「…ら、ラルド…」
その時、彼女は何を思ったのだろうか。
笑顔のままで、彼女は勢い良く…本当に勢いが良く、まるで一気に花開いたように…鼻血を出した。
「うわああああああ!?」
「姉御が真っ赤にいいいいいい!!」
その後、しばらくラルドがカタリーナに近づけなかったのは言うまでもない。