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「じゃあ、今日からここがお前の部屋だから。」


食事の後にそう通されたのは、つい昼頃まで自分が引きこもっていたあの部屋ではなく、もっと広くこざっぱりとした部屋だった。

窓も大きくよく外が見え、ベッドと真ん中にある机に無造作に乗せられた海図達以外は特にこれといった物は置いていない。

明らかに既に誰かが…というか、アルヴァートが使っている部屋だ。
想像はしていたがやっぱり彼と一緒か…とアルヴァートに貰ったクラークをギュッと抱き締めてきょろきょろと部屋を眺める。

部屋の主はポイとこれまた無造作にコートや帽子、更にワイシャツを脱ぎ捨てて、ふむと悩むような仕草をみせる。


「あー…ベッド一つっきゃないな。まあ子供くらいなら入るか。」

「…」

「あ、あと寝間着かー。まあこれでいいだろ。ほらラルド、ばんざーい。」

「ひぇっ!?」


バッとラルドのワンピースを脱がそうとして、ばちんと額を叩かれた。
彼は必死にワンピースの裾を掴んで、アルヴァートから離れようと警戒心むき出しで後退りする。

だが額を叩かれた本人は、その様子に怯む所か「面白い」と上唇を舐めて、逃げようとするラルドを追いかけた。

もちろんすぐに捕まり、ずっと大人しかった彼にしては珍しい程バタバタと暴れるラルドをうつ伏せにして自分の体でそれを押さえつける。


「ちょ、や…っ!」

「なんだ、いっちょまえに恥ずかしがってんの?大丈夫だよ気にすんなって。」

「やー!」


ハッハッハッと遊ぶような笑顔を浮かべてラルドの帽子を自分の帽子がある場所に放る。
次にズボンを脱がしてしまうと、勢い良くワンピースも脱がした。

そこでふと、彼が暴れた理由にようやく気付く。

彼の視界に…ラルドの小さな背中いっぱいに広がる翼のような痣を見て、ようやく。

彼が、「幸福の子供」と呼ばれていた事を思い出した。