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この世界は青の底だと思った。
空と海しかない青い世界。
青と青が溶け合うこの境目は、どちらの青の底なのだろう。
この青の底で、自分達は魚にも鳥にもなれないまま、どこへ向かうのだろう。
手を動かすのが億劫になってぼんやり空を眺めても、その答えは見つからない。
「センチョ。」
呼ばれて振り返れば、少し気弱に笑うディランの姿があった。
アルヴァートは彼に力無く笑いかける。
「…どうした、何かあったか?」
「元々傷が少ないから、修理終わった。あと、準備も。」
そうか、とだけ答えて、再び空を見る。
いつもと何ら変わりない空。何も変わらない青の底。
そう、変わらないのだ。
あの日からずっと、空も海も変わらない。
「なぁディラン。俺、今でもよくわかんねぇんだよなぁ。」
何がとは聞かなかった。
それは言いたい事を理解していたからというのもあるし、単純に聞きたくなかったからでもある。
何も言わないディランをアルヴァートもちゃんとわかっていて、彼は特に気にするでもなく話を続けた。
「俺、ちゃんと俺でいられてるか?」
「…そういうのは、センチョがセンチョらしい事をすれば解決らよ。」
にっこり、笑った。
それだけを言った。
アルヴァートは無表情にそれを見て、こてりと首を傾げる。
「いいのか?」
「うん。」
「そうか…」
いいのか、と繰り返して、帽子を深く被った。
一度大きく深呼吸をして、跳ねるように立ち上がる。
次にディランに向けた表情は、笑顔だ。
「おっし!ディラン、準備は出来てるんだよな?」
「バッチリらよ!」
「ならいい。目的地はわかってんだろ?」
「リアンジェカれしょ?」
「ああ。よし、他の奴らに伝えな。海賊らしく、自分のもんは奪い返しに行くぞ!」