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少女の名前はアーリア・ツィーツィラというらしかった。
自分と二つしか年の違わない彼女は、幸福の子供を保護するよりただの子供を保護する方が面倒でなくていい、という理由だけで彼を切ったらしい。
実際、背中の痣を切られた彼をそう扱う者はいなくなり、皆がどれだこの痣だけを見ていたのかがわかる。
行く当てがあるわけでもないオシリスは、アーリアに着いて海軍に入った。
「…姉さま。」
「何故、姉さまなんですか?」
「尊敬する女性は“お姉さま”と呼ぶと聞きました。」
「デタラメな情報ですね。」
それ以上はなにも言わなかった。
それがどこか嬉しかった。
ただの子供であれる事が嬉しかった。
だから。
「君は、あの海賊と居たいって、あの時証明したじゃないか。」
オシリスは、今の自分の目の前にいるラルドを見る。
あの時彼に呼ばれて飛び降りた姿に、オシリスは彼もまた、背中など関係ないただの子供になれるのだと思った。
「それをあの海賊も受け入れた。それはとても幸せな事だ。みんながそうだと思わないだけで、とても。」
オシリスの言葉に揺らぐ瞳を真っ直ぐに見つめて、彼はその幼子の手をしっかりと握る。
幸福は幸福と認めれば幸福なのだ。
こんな場所に縛られる必要なんて、どこにもない。
「ぼくが逃がしてあげるから。」
だから君は、君の場所へ。