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港に乗り込むまで、彼女は一切の攻撃をして来なかった。
どうやら本気で遊んでいるらしい。

ならそれに甘えようかと、まずはアルヴァートが小舟から一気に港へと飛び乗る。
アーリアはそれを見届けてから刀を抜き、そして一気に駆け出した。

アルヴァートの銃に対し強く刀を振りかざし、まずはそれが発砲される事を防ぐ。
だがそれを読んでいたアルヴァートはそのまま彼女の腕を引いて力をずらすと、彼女の背中を強く打つ。

それに一度顔をしかめるが、だがアーリアはその勢いすら借りて自身を丸めるとアルヴァートを蹴り上げた。
それから足払いをかけてきた彼女に、だがアルヴァートとは違う方向から弾が飛ぶ。

港に乗り上げていたカタリーナが遠くから発砲したのだ。
アーリアは右足を撃たれた事に、だがにぃと笑ってアルヴァートと距離を取り、二人の間の辺りに立つ。


「…本当に、あなた方はあの人魚が大事なんですね。」

「あれは俺のだ。一度引き入れた物は最後まで大事にするタイプなんでね。」

「まあ、素敵ですねそれは。」


余裕な様子で会話を楽しんで、アーリアは自分の懐から銃を取り出した。
彼女が持つのはいつも刀だけであり、銃を持つなんて、と一瞬面食らったアルヴァートの右足にそれを撃ち込み、同時にカタリーナの背中を蹴り上げた。

咄嗟にガードが出来なかったカタリーナは転がる事でダメージを軽減したが、彼女が辿り着いた先はアルヴァートの目の前。

ガチャリと聞き慣れた銃の音がアルヴァートの頭の横で響いて、カタリーナの首もとに彼女の刀が当てられる。
同時に、アーリアの頭にもアルヴァートの銃が突きつけられた。

彼女は真っ直ぐにアルヴァートを見て、何かを見極めるように問いかけの言葉を発する。



「あなた方がそこまでする価値なんてあるのですか?あんな忌み人紛いの幸福の子供なんかに。」



それは酷く単純な質問だ。
だからアルヴァートはもちろん、カタリーナもぷすりと笑顔を漏らす。


「わかってないねぇ嬢ちゃんは。そんな括りなんか関係ないんだよ。」

「船でも言っただろ?一緒に沈むくらいなんてことねーんだ。」

「「もう家族の一員なんで。」」


その言葉や表情には一点の曇りも無く、彼らが心からそう思っている事がわかる。
今海軍と海上でやりやっている他の海賊達は知らないが、少なくとも二人は。

アーリアはゆっくりと目を閉じると、刀を落としてアルヴァートの銃をガッシリと掴んだ。
そしてそれを自分の自分の左肩に押し付けると、なんの躊躇も無くアルヴァートの指ごと押し付けて発砲した。

その行動に動揺した隙に、アルヴァートを遠くへ蹴り飛ばす。


「アヴァン!」

「…ってぇ…」

「さて、これは困りましたね。」


アルヴァートの銃をあっさりと捨てカタリーナの方に滑らせると、わざとらしく腕を振る。


「左腕は動きませんし、足も思ったよりダメージが大きいみたいです。これでもし、“一人を囮にされてしまったら、もう一人は追えませんね。”」


わざとらしく強調された言葉。
わざとらしく並べられた言葉に、アルヴァートは一瞬顔を緩めると、理解したよと小さく呟いた。

くるりと背中を向けて、カタリーナに一言だけ残して走り出す。


「頼んだカタリーナ!」

「あいよ!」


腕一本で振りかざしてきた刀を受け止め、ギリギリと二人の間で金属音が響く。
遠退く彼の気配に、カタリーナはアーリアに笑いかけた。


「…あんたも、なんだかんだ良い奴なんだねぇ。」

「ご冗談を。私はただ、あの人を引きずり出す為なら海賊だろうが忠犬だろうがなんでも利用するだけですよ。」


たったそれだけです。
そう言った彼女は、だがいつでもカタリーナくらいは抜けるはずだと冷静に考える。

だからこそ…カタリーナは何も言わずに笑った。