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マレステラの塔の近く、海軍の船から伝う縄で縛られた海賊船の上。
そこにはマストを囲むように縛られた船員と見張りの四人ばかりの軍人達…その中にはきちんとオシリスの姿もある…がいた。
アルヴァートだけを連れて行った彼らに、カタリーナは暇だと言う事もあり苛立たしげに貧乏ゆすりを始める。
「おい、いつまでこんな姿勢でいなきゃならないんだい?」
「うるさいな黙ってろよ。お前達の命はみんな海軍が預かってるんだからな。」
「誰がお前らなんかに預けるかよ。」
「なら今すぐ殺すよ。」
「けっ。坊やの件でちったあ見直してたってのに、やっぱりケツはケツだね。」
「ケツって呼ぶなクソ女!…てゆうかあの子、話したの?」
「は?どれを?」
「ぼくが、」
幸福の子供だということ。
そう言ってしまいそうだったのを堪えて、オシリスはじっと彼女を見た。
彼女の自分に対する態度は何も変わっていない。むしろ少しは変われよという程にふてぶてしい。
きっと彼は話さなかったのだろう。
そう結論付けてオシリスは一人納得した。
「アタシは手を引いた事しか聞いてないけど何かやったのかい?」
「…別に。それよりも自分達の未来の心配でもするんだね。」
「あ゛あ?」
「もう、リナっては落ち着いてよ。」
縛られたまま殴りかかりそうなカタリーナに、同じ縄で縛られていたディランがそう宥める。
ずれた眼鏡を直す事が出来ず、見づらそうに顔をしかめる彼は子供に言い聞かせるようにして声を出した。
「さっきからリナが暴れるたんびに締められて痛いんらよ。」
「全く、アンタは余裕だねぇ。」
「らって心配する必要なんか無いよ。絶対らいじょうぶらもん。」
にこ、そう笑う彼は確かに何の心配も不安も持ってはいないようだ。
不思議な程に落ち着いた様子の彼に、オシリスを始めとする海軍はもちろんカタリーナも首を傾げる。
彼はただ、穏やかに笑っていた。