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ずっと一緒だと、最中に彼は言った。
ずっと一緒にいてほしい、ずっとずっと手放す事なんてしたくない。もう嫌だ。

彼がそれを彼女に言った理由も、意味も、願いも何も知らない。知る気もない。
けれど、彼が泣いているような気がしたから。

だから彼女は、ずっと一緒だと約束した。
もう、恐怖なんて微塵も無かった。


「お別れだよ。」


どうして。
最初に浮かんだ言葉はそれだった。

ライノルズは突然アーリアに上等な服を着せるとそれだけを言って彼女を港へと連れ出す。
そして彼女に向かって分かり易く、別れの言葉を告げる。


「さよならアーリア。君の生きたい場所にでも帰って、ただの子供として幸せになるんだね。」

「ま、待って…」


彼女が家に帰るまで程度の資金と護身用かの銃っを持たせて、彼は一人船へと戻っていく。

置いてかないで。
そう叫びたいのに叫べない。
どうしてどうしてどうして?


「待って、待って…」


一緒にいたい。
一緒にいるって言った。
散々私を壊してあなたはいなくなるの捨てるの嫌だ嫌です嫌。


「待ってくださいライノルズ!」

「いらない。」


ようやく叫んだ言葉に、たったそれだけの言葉が静かに返ってくる。
数歩先にいるライノルズはやっぱりなんの感情も見せないまま、ただ静かに言葉を突き付けた。


「君は僕にはもう、必要ないんだ。」


それはとても静かな、宣言。
とても緩やかな、拒絶。

目の前が真っ白に塗りつぶされて色が消えて行く感覚に、アーリアは思わず持たされた銃を手に取った。

それを彼に向けて構えて、そして。


「ライノルズウウウウ!!」


叫ぶように発砲した。
あの時は撃てなかったのに、今度はなんの躊躇も無く。

見事に彼の右足を撃ち抜いたらしいそれだが、ライノルズは少しバランスを崩しただけで特に足を止める事はしなかった。

届かない。
届かない届かない届かない。
何もわからないまま届かないまま言葉も思いも何もかも全部全部消えていく。

夢の終わり。
一年にも渡るその夢が悪夢だったのか幸せだったのか、もう何もわからなかった。