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「軍曹、あれ大佐じゃないですか?」

「え、うそ。」


カタリーナと未だに言い合いを続けていたオシリスに、縁に寄りかかってその様子を眺めていた彼と同じ所属の軍人がそう問いかける。

カタリーナの髪を引っ張り始めていた彼はその言葉にポイと彼女から離れ、すぐに彼の隣に駆け寄った。


縁から身を乗り出して見る先には、確かにアーリアの姿が見える。

だがこちらにやって来るというよりはずっと切羽詰まった雰囲気を纏って、目の前に立つ男に対して何事かを叫ぶ。

そして持っていた刀を振りかざした。
いつもと違うそれに、オシリスは何か落ち着かない気分になる。


「…姉さま?」

「あれってこいつらの仲間ですかね。」

「いや、ぼくは見たこと…」


ない、と言おうとした言葉をさえぎるように轟音が鳴り響いた。
耳をつんざくようなそれに、船の上に捕らわれた海賊も待機する軍人も含めた全員が騒然とする。

突然起きた爆発と崩壊。
自分達の方にも降ってきた瓦礫が起こした高波に船が大きく揺れる。


「え、なんだ?」

「姉さま!」

「あ、軍曹!」


アーリアの上に瓦礫が落ちるのを見て、オシリスはすぐさま船から飛び降りた。

仲間の制止も聞かず飛び込み、降ってくる瓦礫に立ち往生しているのがカタリーナ達の位置からも見える。


「よく躾られた犬だなホント。」

「ま、ちょうろいいんじゃない?」


くすくすと笑ったディランは、そのまますっと“立ち上がった。”

彼が立ち上がると同時に緩んだ自分を縛る縄と、ディランが持つ仕込みナイフを見て彼が縄抜けのタイミングを見計らっていた事を理解する。

ディランは立ち上がった勢いで周りにいた軍人を気絶させ、カタリーナを立ち上がらせる。


「やけに落ち着いてたけど、こうなるって計画でもあったのかい?」

「まさか。れもほら、信じてるから。らいじょうぶらって言ったろ?」

「まあね。」


他の面子の縄も切って、ゴキリと肩を鳴らす。
そして彼らは揃ってニィ、と笑みを浮かべた。


「ほんじゃま、海賊の意地でも見せてやりますか?」