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「君がアルヴァートくん?」


にっこり、目の前の彼女が笑った。
屈託の無い笑顔に明るい声。
どれも彼女に似合う綺麗なもの。


「うちヴェルディ。ヴェルディ・イスパルグっていうんよ。アルヴァートくんは10歳じゃけぇ、うちのが4つ年上じゃな。」

「…」

「これからよろしゅうな。」


10歳のアルヴァートはその笑顔にも言葉にも何も返さず、ただ無表情に顔をそらした。

どうでも良かった。
敢えて思った事を上げるなら、このヴェルディという少女は可哀想だなと思う。

自分を預かる事になった、自分といくつも違わない少女。
自分を置いていった両親に“こんなもの”を押し付けられた哀れな少女。


「ところでアルヴァートくんは好きな物とかあるん?今日はうち頑張ってご飯作ったるで!」

「食べられればそれでいいよ。」

「えーそれじゃつまらんやん。何かリクエストしたってー、これからの献立も決めやすくなるし。」

「したって意味ないだろ。どうせすぐ嫌になるよ。」


きょとん、と、ヴェルディは目を瞬かせる。
アルヴァートはそれすら興味が無いとばかりに顔をそらすと、そのまま彼女の家である船に向かって一人歩き出す。


「あんたと仲良くする気なんて無いから、嫌になったらすぐにでも見放せばいいさ。」


そう付け足す事を忘れずにいれば、やがて後ろからくすくすといった笑い声が聞こえてきた。

なんの声だと振り向くも、やはりそこにはヴェルディしかいないわけで。

たった今アルヴァートにわかりやすく拒絶された彼女は、どこか嬉しそうに眉を寄せて笑っていた。


「…なんや、アルヴァートくんはまだ知らんのね。可愛いなぁ。」


その言葉の意味も、笑顔も。
全てから目をそらして彼は歩いた。

それはまだ幼い、彼の記憶。