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アルヴァートという少年は両親に捨てられたのだと、周りの大人達は言った。
彼自身なんの取り得も無ければ口も悪く不器用で何も出来ない、だから捨てられたのだと、触発された周りの子供達も言った。

可哀想に馬鹿みたい残念ねその程度なんでしょう預かってる従姉妹の子も可哀想ね確かもう何回目かしらお前何度も捨てられたんだろ居場所なんて邪魔な子いらないわどこかへ行って可哀想に。

気持ち悪い気持ち悪い。
そんな言葉も目も声もみんな気持ち悪い。
早く消えて無くなればいいのに。

早く、こんな悪夢みたいな。



「アルヴァートくん、おはよーさん!」


そんな明るい声が鼓膜を震わせて、アルヴァートはパチリと目を覚ました。

目の前では従姉妹であるヴェルディがにっこりと満面の笑顔で彼を見下ろしており、彼から布団を奪ってそれを洗濯籠へ放り入れる。


「もうすぐ朝ご飯出来るけぇ、今の内着替えたって。あ、洗濯するから服こっち寄越してな。」

「…」

「早よせんとうちが脱がすで?」

「変態。」

「褒め言葉じゃよ。」


あっけからんと言うヴェルディに、こんなのとちょっとでも血がつながっているなんてとため息をつく。

自分を押し付けられただけだというのに、彼女は気さくな態度を取ってくる。
その精神は健気で素晴らしいのかもしれないが、アルヴァートはなんて馬鹿なんだろうと思っていた。

そしてどうせ、彼女も自分をいつか邪魔に思うのだろうなと。


「うちはあと百年くらいは君と一緒に居るつもりじゃから。」


ひょいと、アルヴァートが脱いだ服を拾いながら彼女は世間話でもするかのように言った。

思わずサスペンダーを止める手を止めて彼女を見るが、いつもとなんら変わらない様子で言葉を繋ぐ。


「うちがあんたの事、守ったる。まあ根拠も何もあらへんから、それを信じたくないっちゅーんもわかるけぇ、今すぐうちに懐いてーなんて言わんよ。うちかて下心くらいあるしな。」

「…なんだよ、あいつらから貰えるお金かなんか?」

「叔父さんは必要最低限しかくれんよ。下心っちゅーんは年下の成長期が一番美味しいから…じゃのうて、あんたを幸せにできたらうちも幸せになれるからじゃ!」


にぱっと笑う。
多少聞き捨てならない単語が聞こえたが、アルヴァートは特に気にする事なくヴェルディを見た。

信じられない、どこまでが本当?

ヴェルディも、そんな疑惑に満ちた視線を浴びながらいつも通りの態度を貫く。


「あんな、誰かを幸せにした分だけ、自分にも幸せは返ってくるんや。幸せが返って来たからまた返して、そしたらまた幸せになって。幸せを繋げていったら、うちって世界一の幸せ者になれるじゃろ?」


だからうちがあんたを守ったる。

そう言う彼女は確かに本気で、だが無償というわけではない事がどこか安心する。
だからだろう。
だからアルヴァートは、くしゃりと顔を歪めた。
笑おうとして失敗した、泣きそうな顔。


「…意外に打算的なんだな。」

「うちはアルヴァートくんと違うて純情じゃないもん。」

「俺だって純情じゃねぇよ。」


くすくす、アルヴァートの前髪をかきあげて、ヴェルディは至極楽しそうに笑った。