Apocrypha編@










互いの令呪を賭け、シロウとエリスの一騎打ち。彼のサーヴァント、セミラミスの不意打ちに何とか対処するも一瞬何かを考えエリスは刀を鞘に戻した。

「負けたよ」


シロウは虚をつかれた表情で動きを止めた。彼のサーヴァントも手を止めたがエリスを警戒した表情は変わらない。


「…何故です?」


「マスターであるキミは叶えたい願いの為にあらゆることをした。他の赤陣営のマスターはそれを見破れなかった」


私もその一人だけどね。とでも言う様に一度言葉を切り、少し呆れた表情を見せる。


「それにアサシンもキミのサーヴァントとして動いたに過ぎないのだから、その時点で勝敗は決まった」


と更にもう一度言葉を切り、ただ2つだけ条件がある。そう言ってエリスはシロウと目を合わす。


「…アキレウス。私の召喚したサーヴァントが望む戦いをさせて欲しい。そして、自害はさせないこと」

「構いませんよ。自害はさせるつもりはありませんし、彼の望む戦いはこちらとしても必要なことですから」


「そう。なら、譲渡するわ。令呪」

「存外抵抗した割には清々しい程にあっさりとしておるなお主。自らの命は請わないのか?」


「…あまりどうでもいいかな。キミのマスターの願いをが叶うなら、私の願いは叶わないものだろうし」


アサシンが何か言う前に、先程まで彼女を見ていたシロウが口を開いた。


「…貴女の願いを聞いても?」


「応える気はないよ…ほら、令呪を渡すわ」


シロウに一歩近付いた彼女は彼の手を取って、自身の魔術で令呪を転写した。そして崩れ落ちる様にして彼女の意識は暗転した。





『ごめんなさい、ライダー』


そう、初めて念話でマスターであるエリスの声を聞いたライダーの動きが止まった瞬間、他の赤側のサーヴァント達が一斉に地に縛り付けられる。


それが令呪によるものであると理解した時、ライダーはようやく己がマスターに意識が向いた。






「おい、神父。マスターはどうした」



「彼女なら今は一室で眠っていますよ。どういう訳か令呪の譲渡後に倒れましてね」


「…生きてんのか」


「ええ。私は彼女を殺す気はありませんから、そこはご安心を」


神父の言葉は信じられないが、既に彼女はマスター権を放棄している。ライダーはその後の追求をあまりするつもりはない。そこまでの信頼関係は2人の間にはなかった。




赤のアサシンの魔術による鎖が赤のセイバーを縛り付けた瞬間、キンッと金属音が響き鎖が切られていた。



「…貴女は赤のライダーの…!」


「ここから出るんだよね。私もご一緒しても?」



エリスは一度だけ赤のライダーに視線を向けるも、後腐れは全くないとでもいう様に、ルーラーと黒のアーチャー、赤のセイバーと共に空中庭園から離脱した。








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