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2人の時間


名古屋の錦栄町。賑やかな町の中の一角。コンテナのような部屋の中に品田はいた。ダラダラと布団の上で横になり、惰眠を貪っていた。仕事も終わらせて完全に自由な時間。もう少し夢の中に漂っていようと布団を被った時だった。
「たっちゃん」
声がした。可愛らしい、東京にいるはずの滅多に会えない愛しい恋人の声だ。夢の中でくらい会えたらとよく思っていたが、それが叶って出てきてくれたのか。
「たっちゃん起きて」
その声は品田の体を揺する。体まで出て来てくれたのか。嬉しい限りだと、その手を掴んで布団の中へ引っ張りこんだ。抱き締めれば暖かい体温が感じられた。まるで現実のようだと再び深い夢の中へと落ちていこうとした。
「ちょっとたっちゃん!!いい加減にしないと怒るよ!」
そう叫んで、べシッと頬を叩いた。さすがにそこで品田も目を覚ました。目を見開いて頬を叩いた相手を見る。そこには遠く東京にいるはずの恋人の堂島名前の姿があった。
「名前ちゃん!?何時からここに!?」
「もう!さっきから呼んでたでしょ!離して!」
と、モゾモゾと品田の腕の中で身じろいでいる。品田は名残惜しさを持ちながら、名前を腕の中から解放した。
「ご、ごめん名前ちゃん」
「たっちゃんたら寝ぼけて…もう!」
名前は僅かに乱れた服を正して、布団の上に座った。品田も倣うように布団の上にあぐらをかいた。
「えと、名前ちゃんどうしてここに?」
「たっちゃんを驚かそうと思って連絡せずに来たんだけど…」
名前は部屋を見回した。散らかった部屋。だらしの無い、一人暮らしの男性の部屋という感じだ。名前はふぅ、と息をつき、
「もうこんなに散らかして…片付けるのが先だね」
そう言って立ち上がり、まず放り出された洗濯物を集め始めた。品田は慌てて、
「ま、待って待って名前ちゃん、そんな事しなくていいよ!」
「こんなに散らかってるんだから片付けなきゃダメでしょ」
そう言いながら、洗濯物を洗濯機に放り投げ、放置された雑誌や本を片付け始めた。
「あぁ、そこは駄目だって!」
品田は慌てて隠そうとしたが、時すでに遅し。名前の手には如何わしい本が手にされていた。
「たっちゃん…」
「あわわわわ…ご、こめん名前ちゃん!違うんだよ!?これは仕事の…その、なんというか…!」
なんとか言い訳をしようとする品田に、はぁ、と溜息をつき、名前はその本を置いた。
「はぁ…別に怒ってないよ。たっちゃんの仕事のことは理解してるし…」
「あ、ありがと…でもその、なんというか…」
「何?」
ポリポリ、と頭をかき、
「名前ちゃん、怒ってるでしょ?」
そう品田が言うと、名前は声を荒らげ、
「怒ってない!」
「ほら怒ってる…」
「こ、これは違うもん!だって!」
「だって?」
名前は頬を赤らめ、
「だってたっちゃん…私に手出してくれないのにこんな本ばっかり持ってる…」
名前は真っ赤になった顔を隠すように俯いた。品田はしばらくぽかんとして、名前の言葉を理解してハッとした。
「ひひ、名前ちゃん、それってつまり!」
「な、なんでもない!忘れて!部屋片付けなきゃ!」
「待って待って名前ちゃん!」
品田は名前を後ろからギュッと抱きしめた。
「ちょっ、たっちゃん!」
「俺、ずっと我慢してたんだ…名前ちゃんとの関係は大切にしたかったし、嫌がられたらどうしようとか思ってたしさ」
品田は名前の耳元に唇をよせ、
「それは、いいってことだよね…?」
「んっ…」
ピクリ、と名前の体が震える。
「名前ちゃん、耳弱い…?」
「ち、違っ…!」
名前の耳にちゅっと、唇を当てる。
「やっ…たっちゃん、駄目…!」
「駄目?名前ちゃん、嫌?」
品田は名前を抱きしめる腕を離した。
「えっ…?」
「名前ちゃんが嫌なら、俺は手を出さないよ。でも名前ちゃんが望むなら…」
名前に頬を寄せ、
「俺は名前ちゃんを抱きたい」
「っ…!」
顔を真っ赤にして名前は品田を見た。どうするべきか、決めかねてる表情だ。
「あっ…わ、私…」
俯いて、か細い声で呟く。
「嫌じゃ、ない…」
その言葉を聞いて、品田は名前を布団の上に押し倒した。
「た、たっちゃん…!」
「俺、嬉しいよ、名前ちゃん…名前ちゃんも同じだったんだよね…?」
「…うん」
名前の答えを聞いたと同時に、名前の唇を塞いだ。浅い口付けが、徐々に深いものになっていく。舌が絡み合う中で、吐息が漏れる。
「ん、ぅ…!」
「名前ちゃん…」
名前の服の胸元に手をかけた。






その後は、二人だけの時間。

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