Warehouse


恋のリーベストランク


「名前、これをあげるわ」
ドミトレスク城から工場へ帰ろうとする名前に、カサンドラがそんな言葉をかけた。
「なになに?カサンドラ?」
ドミトレスク家の三姉妹とも交友のある名前は、なんの警戒もなくカサンドラへ駆け寄る。カサンドラの手には青い液体の入った瓶が握られていた。警戒心の欠けらも無い名前に、カサンドラの隣にいたベイラが楽しげに笑いながら、
「元気の出るお薬よぉ。ハイゼンベルクに飲ませてあげて。元気になるわよ」
と言う。
「そうそう。ハイゼンベルクが元気になれば名前も嬉しいでしょう?」
続けて言うのはさん姉妹末の妹のダニエラ。三人とも楽しげに、怪しく笑っている。
「へえ〜。元気が出る薬!もらっていいの?ありがとう!」
なんの疑いもなく名前はその瓶を受け取った。瓶には見慣れない単語が書かれていたが、名前はさして気にしなかった。三姉妹が自分達を騙すなど微塵にも思っていないのである。例え三姉妹が怪しげに笑っていたとしても。
「今日中に飲ませてあげてね。新鮮さが大事だもの」
「そうそう。早く元気にしてあげてね」
「ハイゼンベルクも喜ぶわ」
クスクスと怪しげに笑いながら三姉妹は虫の姿へとなり散り散りになって行く。
「元気が出る薬、かぁ…」
そういえば最近疲れている気がする。元気になればきっと彼も喜んでくれる。ワクワクとしながら名前は工場へと帰って行った。





「はい、カールどうぞ」
そう言いながら名前はソファに座るハイゼンベルクへ瓶を差し出した。設計図から顔を上げ、怪訝な顔でハイゼンベルクが名前を、正確には名前が持っている瓶見てくる。
「元気が出るお薬だって!ドミトレスク夫人の娘さん達から貰ったの」
ニコニコ、と笑いながらなんの疑いもなく瓶を差し出した。ドミトレスクの、とその名前を聞いた途端ハイゼンベルクの顔が更に顔が歪む。
「あの女共から、だと?そんな怪しいもん捨てろ」
そう言い捨てて設計図へ再び目を落とす。
「待ってよカール。せっかく好意でもらったのに!ちょっとだけでも飲んでみてよ」
「お前なぁ…そんな怪しいもん飲めるわけが」
と、そこまで言った後、ハイゼンベルクはピタリと動きを止め、眉を顰める。
「カール?どうかしたの?」
「…お前、これがなんなのか分かってるのか?」
「?元気が出る薬、でしょう?」
疑いなくキョトンとそう言う名前に、はぁ、とハイゼンベルクはため息を着く。瓶を手に取り、まじまじと瓶を、瓶に書かれた単語を見ている。
「?カール?」
彼の隣に触り、顔をのぞき込む。
「カール、そんなに嫌なら飲まなくて大丈夫だよ?」
「…お前、これがなんて書かれてるかわかるか?」
と、瓶に書かれた単語を指す。瓶には「Liebestrank」と書かれていた。
「リーベ…?ううん、わかんない」
「リーベストランクだ。意味はまぁ…」
ハイゼンベルクはそう言いかけ、瓶の蓋を開け、一気に中身の青い液体を口に含んだ。
「か、カール!無理に飲まなくても…!?」
そう言いかけた名前に、ハイゼンベルクは口付けをした。
「ん!?んんぅ…」
口を開けるように催促すれば、名前はおずおずと口を開く。その隙間から液体が流れ込んでくる。飲みきれない液体が口角からこぼれ落ちる。その液体を飲み干したのを確認し、ハイゼンベルクは唇を離した。
「んっ…カール、突然どうし…!?」
突然身体の奥底から熱がおしよせてくる。その熱は全身を包み込み、やがて名前は熱に浮かされる。
「あっ…あ、カール、なんか、変…!」
はぁ、と溜息をつき、ハイゼンベルクはソファに背を預ける。
「…どうやら本物らしいな。ったく、変なもん簡単にホイホイ受け取りやがって…」
そう言って、ハイゼンベルクは名前の手を引いて自身の膝の上へ乗せる。
「あっ!」
されるがままに名前はハイゼンベルクの膝の上へ。ハイゼンベルクに掴まれた手から熱がさらに広がっていく。
「か、カール…!」
「どうした、名前。元気になったか?」
意地悪くそう言うハイゼンベルク。楽しそうに笑っている。
「元気じゃない…なんか変…体熱いよ…!」
「当たり前だ。お前が飲んだのは媚薬だからな」
「び、媚薬…?」
ハイゼンベルクは名前の太腿へ手を伸ばし、そっと動かす。
「んぁ!」
それだけの動きで名前の身体がビクンと震える。
「やっ、カール、ダメ…」
「リーベストランクはドイツ語で媚薬って意味だ。まぁこれに懲りたらホイホイ変なもん貰ってくんじゃねぇぞ?」
そう言いながらもハイゼンベルクは楽しげだ。手を相変わらず太腿に沿わされている。少しの動きでそれは名前に快感を与えることが出来ていた。
「で、名前」
名前後頭部に手を乗せ、自身に近づけさせる。
「どうして欲しい?その可愛いお口で言ってみな」
ニヤニヤと笑うハイゼンベルク。熱に包まれた身体をくねらせる。一人ではどうしようも無いこの熱を持て余すことは名前にとっては拷問のようだった。そんな名前の、答えをひとつだった。
「意地悪…!」
そう言ってハイゼンベルクへ口付けを落とした。

- 6 -

*前次#


ページ: