10▼きらびやかな脳髄とその他の塵芥

武は、沢田くんと一緒に補習の宿題をするそうだ。よかったら手伝ってくんねーか、と言われて、わたしは二つ返事で頷いた。
それから獄寺くんとも合流して、沢田くんの家へ向かう。
獄寺くんは、わたしという存在に興味が無い。何度か会話のやりとりはあるけれど、そこに中身はない。
わたしも獄寺くん自身に、興味はない。武がそこに関わるから、関心はある。
アスファルトに熱が反射して、足が焼かれるように熱い。わたしはお母さんに似て日焼けをすると赤くなってひりひり痛む体質だから、この日差しはあまり嬉しくない。
閑静な住宅街を進んでいく。表札に沢田と書かれた家の前で、武と獄寺くんが立ち止まった。
獄寺くんが、家のチャイムを押す。沢田くんの「はーい!」という声が聞こえた。
「おじゃましまーす」
階段を下りてきた沢田くんは、玄関に立つ獄寺くんとわたしを見てあからさまに顔を青くした。
わたしは愛想よく笑いながら、内心首を傾げる。
沢田くんには、違和感を感じる。
普段、武と話しているところを見たり、ときどき会話を交わしたりすると、沢田くんは至って普通の中学生男子だということがわかる。
突然人格が変わって下着一枚の露出狂になるような、さらには常人にはできないジャンプや力技をこなすような人間には、見えないのだ。
武に悪い影響が無いなら、わたしはその違和感の原因に興味が無いし観察や考察をするつもりもない。しかし彼は一度武を殺しかけているから、念には念を入れておく。
予想していなかった来客二人に驚く沢田くんに、武が解ける人間がいないと終わらないと思って呼んだんだと説明した。
「獄寺がいたら百人力だぜ」
「よせやい」
武の隣で、獄寺くんが誇らしげだがむず痒そうな顔をする。
羨ましい。わたしも武に褒められたい。
獄寺くんをじっと見ていると、武が振り返った。
茶がかった瞳が、わたしを映す。
「それに、美月は教えるのすげー上手だしな」
「そうかな……ありがとう」
武の言葉に、わたしは内心苦笑した。
それは、武が教える相手だからだ。他の人間にあんなに丁寧に教えるなど、わたしには不可能だ。
沢田くんは当然わたしの心の中など知らないので、武の言葉に安堵の表情を浮かべた。
「狭いけど上がって」
「では失礼させていただきます!」
「あ、ツナこれ差し入れな」
靴を脱ぎはじめる武の後ろ姿を見つめて、幸せな気持ちになる。
「お邪魔します」
今日もこれから、武と一緒に過ごせるのだ。

[ 10/20 ]