11▼嘘だね見抜いたよ

そういえば、武以外の男の子の部屋に入ったのは、沢田くんの部屋が初めてだ。
わたしは、彼の部屋を見回した。
武の部屋の壁にはある野球選手のポスターが無くて、武の部屋には無いゲーム機が床に置かれている。
その他にもあちこちに小物が置かれていて、武の部屋に比べると少し賑やかだ。
ついきょろきょろ部屋を見回していたら、沢田くんに気まずそうな目線を向けられた。
「汚い部屋でごめんね」
わたしは、笑った。
「違うの。楽しそうな部屋だな、と思って」
そう言うと、沢田くんはほっとしたみたいだった。
沢田くんは、部屋の真ん中に、背は低いが大きめの机を用意していた。武が座った辺の横に、わたしも座る。その隣に沢田くんが座って、獄寺くんがわたしの向かいに座った。てきとうに座ったのに、丁度良い配置だ。
武と沢田くんが、それぞれ課題のプリントを机に広げた。
わたしは、武のを少し覗き込んだ。思った通り、沢田くんは獄寺くんにプリントを手渡す。
わたしはちょっとだけ微笑んで、改めて問題をざっと見た。
ほとんどは、教科書の内容を理解すれば解ける問題だった。
わたしは顔を上げて武を見た。
「どーだ?」
「うん、武なら、教科書を読めばほとんど解けると思うよ。ただ一問ものすごく難しいから、わたしはそれの準備してるね」
「ん、サンキュ」
明朗な笑顔を見て、胸の辺りがきゅうきゅう締め付けられた。わたしは慌てて俯いた。
「そのために、来たんだし、ね」

問7は、恐ろしい難問だった。
わたしには解けなかった。獄寺くんも、わからないと言っている。
このままではいけない。全部解けないと武は落第になってしまう。獄寺くんも、十代目と言い慕っている沢田くんが落第になってしまうのは絶対に避けたい旨を明言している。
わたしと獄寺くんの利害が、一致した。
軽い席替えを行って、わたしと獄寺くんは二人で問題にアプローチをかけていた。
獄寺くんは本当に頭が良かった。中学生のレベルを超えた知識知恵知能を持っていて、正直、わたしは正攻法において足元にも及ばない。
だから代わりに、彼には無い発想ができないかということに重点を置いて、必死に問題に取り組む。
しかし進歩は全くないままに、時間だけがただ無駄に過ぎた。
沢田くんが普段使っているらしい目覚まし時計の針の音が、いやに耳についた。
と、不意に、鼻を刺すような臭いが漂ってきた。同時に、何故か室温が跳ね上がったように感じる。
「このくそ暑いのにおまえ達むさくるしーぞ」
耳に覚えのない声が、背後から聞こえてきた。

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