原作11巻(94話途中)
どうやらラスボスのとこに持って来られた。手の奴とその仲間もだ。状況からしてこのマスク野郎が先生とか呼ばれてたヤツだろ。逃がしやがったんだ。手下が失敗したから、その計画の成果もろとも。そこまで考えてハッとする。辺りを見回す。
「彼女ならここに居ないよ」
マスクの男の声は笑っていた。目の裏に、最後に見た瞳が浮かぶ。
尋常な様子ではなかった。何かしやがった。「しきさん」全部欠落したような声が耳の奥から離れない。
「惜しかったなあ。もう少し早い方が良かったかな?」
マスクの男は次は、はっきり死柄木を見て言った。
「それでもなかなか良いタイミングだったよ弔。夢はしっかり見てもらった」
ゾ、と背中を嫌なものが走っていく。
「彼女には美しく咲いてもらおうねェ」
*
オールマイトの渾身の一撃の直後に、その子は意識を取り戻した。
タイミングからしても、オール・フォー・ワンに何かされていたと考えるのが妥当だろう。
オール・フォー・ワンがヴィラン連合と爆豪くんを転送系の個性で持っていったとき、この子だけは何故か連れていかれなかった。
奴にどういう意図があるのかわからないけれど、とにかくこの子が無事に目を開けてくれたことが何より重要だ。
医師の診察を終えて病室のベッドに横たわるその子に、歩み寄った。
「君、行方不明者の一人、津野鹿乃さんだね。大丈夫かい? どこか痛いところは」
ぽろっと涙が頬を伝った。
澄んだ森色の瞳から、ほろほろ涙が零れ出た。
口をつぐむ。まだ十五歳の子供だ。怖かっただろう。
「……大丈夫。ここはもう安全だよ」
「……デクくん」
透明な声で小さく呟かれたのは、人の名前だった。確か、オールマイトの教え子の子だったか。
「しき、さ……デクく、ん……」
蛇口が壊れてしまったみたいに、彼女の涙は止まらない。
