原作12巻(101話途中)
おお、とどよめきが上がったのは当然のことだと思う。僕だってびっくりした。でも確かに、あの異常な事態の中とはいえ彼女はクラスメイトほぼ全員相手に立ち回っていた。その状況判断力も機動力も本物だというのは、この目でも体でも確かめた。
それが、改めて表に出てきただけだ。
「クソムカつく速さだな鹿ァ」
かっちゃんの左手が鹿乃さんの喉元で小さく音を立てて爆ぜている。膝をついた形の鹿乃さんはしかし、左手に携えた角の切っ先をかっちゃんの耳の下ぎりぎりに宛がっていた。
「鹿乃すごい」
近くで休憩していた耳郎さんが呟く。思ったことがそのまま口から放り出された感じた。
鹿乃さんが角の槍を下ろした。フンと鼻を鳴らしてかっちゃんが手を退ける。
「見てからそこまで動けるの?」
「ァア?! こんなんフツーだろうが!」
「ずるい」
ここは体育館γ。必殺技練習の隙間の時間にかっちゃんが鹿乃さんに声を掛けたのも、その内容が「一本戦んぞコラ」だったのもびっくりしたけれど、結果も同じくらい衝撃的だった。
