心中するためのまばたき
ごく自然に腰に手が回される。明るいところに出てきたからだ。荼毘は買い出しに私をよく連れていく。
カモフラージュのためだった。人間とは不思議なもので、継ぎ接ぎの皮膚をした人間が一人でいると不審がる。けれど私が連れ添っていると、逆境にもめげずに闘う健気な恋人たちだと勝手に受け取ってくれるのだ。
上辺だけで他人を判断するおかしな社会も、きっとこれから変わっていく。
荼毘の恋人のふりは、とても自然だった。よそよそしい感じもいやらしい感じもしなかった。ずっと前からそうだったように静かに私に寄り添ってくれる。安心する。仲間贔屓が過ぎるかもしれないけれど、荼毘はふとした仕草に育ちの良さがちらつくように思う。
「鹿乃、欲しいものは?」
声は淡々としているけれど、耳に心地よい柔らかな低さだ。見上げると、翡翠の瞳がこちらを見ている。この世の何より綺麗だと思った。
「もう無いよ、ありがとう」
