音も立てずに門は開いた。つまり、今も使われているということだ。ボクたちが小島に乗り込んだことは、もうクラックの連中に知れ渡っているかもしれない。
門の先で鬱蒼と茂る木々は、ボクらを拒む確かな意思のように見えた。
ボクはこれからどうするかを跡部に聞こうとした。のだけれど、途中でちょっと寄り道をしたくなった。
口元をジャージの袖で隠して、彼女は桟橋の板に視線を落としていた。しきりに瞬かれる長い睫毛の下で、丸い瞳は水面みたいに揺れている。夕日は彼女の*の赤みを隠すように、綺麗にその横顔を染めていた。
今の彼女を見て可愛いと思ってしまうのは仕方がないと思う。可愛いといっても、自分の尻尾を追いかけてくるくる回る子犬を見ているような気持ちだ。白石が困るような感情とは違うから、大目に見てもらおう。
そんな三藤さんの隣にしっかり立っている白石は、落ち着いてきたのかもう目が離せないのか、三藤さんのことを見ている。今まで気づかなかったのが不思議なくらい、その眼差しは温かで、同時に少し違う熱があった。
少しして、三藤さんは思い切り首を横に振った。ぐっと上げられた顔はまだ少し赤いように見えるけれど、切り替えようとしているのだろう。
それを見ていた瞳がふいと逸らされた。*がちょっと赤い。まったく罪作りだなあ。
水上バイクの固定が終わったらしく、手塚や跡部がこちらへ早足にやってくる。
木手が何やら三藤さんに話しかけたので、ボクの視線はまたつい彼らに向いてしまう。木手に二回名前を呼ばれて、はっとした様子で三藤さんは木手に向き直った。白石、これはひょっとすると脈があるかもしれないよ。
「……ちょっと、大丈夫なんですか? 先程から様子がおかしいですよ」
木手は訝しげだ。彼は問題の瞬間を、船のエンジンを止めていて見ていない。
「まさかとは思いますが……熱があるのを隠していたりしませんね?」
「えっ」
三藤さんがたじろいだ。木手にしてみれば、物凄く怪しく見えるだろう。やはり貴女、と長い腕が三藤さんに伸びた。
「あー、木手クンごめんな」
その指が届く前に、彼がさりげなく二人の間に割って入る。すごく些細なことなのに、触れてほしくないんだ。部長である彼からは予想もつかないけれど、プレイヤーとしての彼からはその欠片の影をうかがい知ることができる。
何故貴方が謝るのかと問いかける木手の目から、白石は一切目を逸らさなかった。
「なんちゅーか、俺のせいやねん」
「……はい?」
「心配せんといてや」
全く理解できないという顔をしている木手を、白石は強引に押し切った。
先程から本当に面白い。状況が状況じゃなかったら、もう少し見ていたかったな。