兄さんが、そばに居るような気がした。
目を覚まして、はやく、そうじゃないと兄さんが何処か遠くへ行ってしまいそうだから。
「兄さん、待っ…て……え?」
「…あ、」
ぎゅっと握りしめたのは私よりずうっと細い腕。
かなり勢いよく掴んでしまったのか、この少年、リゼルグはとても驚いたような顔をしていた。
…えっ、なんでこいつ居んの。
「…り、り、リゼルグ…!どうして?!」
「お、落ち着いて!ここは病院、君はさっきの戦いで気を失ってしまった」
「ま、また倒れたのか?!」
「(また…?)あれだけ血を流してれば…ね。その…本当に、すまない」
深々と頭を下げるリゼルグは、先程の苛烈な雰囲気とは打って変わって丸くなった姿になっていて、思わず呆気に取られる。
そんな様子の私が面白かったのか、彼は頭を上げでこちらを見るなりクスリと笑っていた。
「そんな笑うくらい変な顔してる?」
「いや…本当にすまない……ちょっと面白くて、ね」
「…あっそ」
「…リリカ、だっけ?君には本当に申し訳ないことをした。あの時のボクは本当にどうかしていた。すまない、何度謝っても許されない事を…」
「もういい、いいから謝んなって」
「……そっか」
そう言うと、リゼルグは黙ってしまった。
余りにも不器用すぎる返答を返してしまった…あーあ、やっちゃったよ私。
こういう時、なんと言うべきなんだろうか?まるで分からん。
暫くの間、静かな時間が過ぎる。
「…あのさ、リリカはハオの…手下だったの?」
「えぇっ?」
「答えて」
「…違う。ただ私はアイツに変なこと吹き込まれて葉達に突っかかっただけ」
「…そっか。ごめん」
「あのさぁ、そのやたらごめんって言葉入れんの、止めな?別にさっきの事、気にしてないんだから」
「…うん」
「で、アンタは何であんなにスパークしてたんだよ。それだけが今気になってんだ」
そう、確かに私はこの少年の豹変ぶりが非常に引っかかった。
コイツの心の奥底に何が燻ってるのか、好奇心もあるが只単純に、もしこれから道中共にするのなら少しはバックボーンを知っておきたいのである。
…知らない状態でまた地雷を踏むのは勘弁したいしな。
「じゃあさ、僕も君のこと、聞いていい?」
「体重とスリーサイズ以外なら答えてやるよ」
「本当に失礼と思うけど、君もう少し口を慎んだ方がいいと思うよ…」