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雪深い山々は壮大で、うちはあまりこういった絶景スポットなるものをめぐる文化がなかったため、非常に新鮮で感動した。
私の地元はそれ程大した雪も降らず、遠くに見える山が雪化粧をしてるなーといった感じだったので本当に新鮮だ。

「すっごいなぁ…私こういうの写真でしか見た事無いんだよ」
「へぇリリカ。お前人生めちゃくちゃ損してんな…俺の故郷はこーんな感じの山があって、それでよーく遊んだもんだぜ」
「いいねぇ〜。ウチは休みの日もずっとカンヅメだったから、外で遊ぶってのがやっと大きくなってからでさぁ。うらやましい」

雪をかき分ける車のタイヤで巻き上げられた雪は、たまに私らの座る荷台に飛び込んでくる。
それをつまんでは溶けるまで遊びながら、昔の事を思い出して柄にもなく少し気持ちがブルーになった。

「おう、なら今からでも遊ぶか」
「はぁ?やだよ」
「即答かよ!」

ウィンタースポーツなんてしたことが無い。そんな中ひっろい大地で育った雪遊びマスターと遊んだってろくなことにならない。絶対。
あとこいつにだけは運動オンチって知られたくない。ぜってーやらない。

「…あのうるさい馬鹿どもは放っておいて、リゼルグ、お前に少し聞きたいことがある」

ホロホロは誘いを一蹴したのが気に入らないみたいで、ぶつくさと文句を言ってやがる。全く器の小さい細かい男だ。と心の中で言ったつもりがうっかり漏れてしまった。
そっから面倒くさい不毛な口論へ発展していたら、蓮がなんかごちゃごちゃ言ってるのが聞こえた。
バカとはなんだ、バカどもって、私も入ってんのか。

「貴様、変に隠し事をするのはやめた方がいい。パッチの村ではなく、なぜ『それを知るもの』をダウジングしたのだ」
「…流石、蓮くんは鋭いね。リリカには頼まれごとの関係でもう言ったけど、皆には隠せなかったか」
「なんだ?何か秘密でもあるんか」
「あまり言いたくなかったけど、実はボクのダウジング能力ってまだまだ未熟なんだ。人の気配とか、そう言った些細な情報しか探れないんだよね。リリカにはこの能力で右に出るものは居ない。とか言っときながら…大したものじゃない」

アホのホロホロとの口論より、蓮とリゼルグの会話の方が興味深いのでアホそっちのけで聞き入ってしまった。

隠し事を笑顔で言うのは本当に肝が座ってる証拠なんだろう。
それこそリゼルグクオリティなんだろうけど、兄の件でこの子の能力の凄さを目の当たりにしたから彼の発言は謙遜しすぎやしないかと感じる。

「ざっくりとしか探れないんだ。だからSFの予選参加の時も大変だったね。でも、そんな時こそ彼女に頼るんだよ。ほら、出ておいで」

リゼルグがそう言うと、前に一度お目にかかった可愛らしい妖精さんが顔を出した。
メルヘンな童話の一節に出てきそうな見た目の彼女がリゼルグの持ち霊なんだろう。

「モルフィンと言って、ケシの花の精霊です。彼女がいれば半径1km位なら大体探れるし、ボクだけじゃ難しい探知も出来るようになる。頼りになるパートナーですよ」
「か、可愛い…いつ見ても可愛いねぇ」
「ふふ、リリカも充分可愛いと思うけどね」
「やだぁー!そんな事言っても何も出ねーぞっ!」
「…コイツは社交辞令を真に受ける間抜けだから、あまり変な事は言わん方が良いぞ、リゼルグ」

私は大変都合の良い人間なので、こーんな年端も行かぬ小さなジェントルマンからのお言葉もありがたーく受け取る主義なのである。
しかし蓮の放った言葉はかなりグサッときた。言葉のナイフで虐めるのはやめろ。

「しっかし、かわいいなぁ」
「おう、メラ可愛いぜ…」
「竜、お前どこ見て言ってんだ」

葉の指摘する言葉にハッとした。こ、こいつモルフィンでなくその主に言っている……!!
なるほど、リゼルグと竜が隣同士にならんように私が間に配置されたって事か……席順の配置に今合点がいった。

「いやぁ、しかし精霊にしとくには勿体ねぇ可愛さだぜ。リゼルグもいい持ち霊に出会えたんだな!」
「ありがとう、ホロホロくん。
……今思うと、ボクが本当にダウジングしたかったのは、支えてくれる仲間だったのかもしれない…ボクは君たちに巡り会えて良かった。ふふっ」

あどけない笑顔でサラッと落としてくるもんだから皆一瞬変な間を置いてしまった。
さっきもそうだけど、こいつ、マジモンだ……マジモンの人たらしだ……!お、恐ろしい子!

「な、なんて恥ずかしい事を言うんだコイツ!!」
「天然って怖ぇ……俺が女だったら落ちてた」
「ホロホロの女版…やめよう。想像すんのやめよう」

嫌な想像をしてしまい思わずさぶいぼが立ってしまう。
アホな会話をしているとリゼルグが面白おかしそうに「きっと君が女の子なら、可愛いんだろうね」と追撃してきやがった。
もう確信犯だろこいつ!