「いやいや、知られていましたか……たしかに我々はハオ様の臣子です。いやなに、無闇に争う気はありませんよ」
「では何の用だ」
何もする気がないと言えど、緊張が走る。
蓮が対峙し話をしているその時、背後からとてつもない殺気を感じた。
「り、リゼルグ……?」
初めて見る、殺気立った彼の表情に思わず動揺した。
そうだ、彼は両親をハオによって亡くした…
ハオの部下は、それと同等の憎しみを向けられてもおかしくは無い。
「しかし、ワタクシ達とは初めましてですが……左門リリカ。貴女一体何をしているんです」
「……あ??」
素肌を隠すようにカンドゥーラとクゥトラのような物を被る布ずくめの男に、身に覚えのない指摘をされ変な声が出た。
「ハオ様直々にご命令を受けたというのに麻倉葉様ツアー御一行を倒せていないとは。いやはや嘆かわしい。あぁ、もしかして、仲間になったフリでスパイですかな。はっはっ、とても良い考えだと思いますよ。裏切りのユダとなるのは非常に良い。このまま貴方も我々とあの葉様の『お友達』で少し遊ぼうじゃありませんか」
男がそう言うとほかのハオの手下共も共感するように囃し立てる。
違う。私は一時的とはいえ敵対こそしたが、今は一切ハオに対する固執なんて全くない。葉達に危害を加える気は一切無い…!
「お、オイ待てよてめぇリリカの姉貴はそう言うんじゃ……リゼルグ??!」
竜が全力で私のフォローをしてくれているに感謝しつつ、根も葉もない事を言い煽られているのはまーったくもって気分が悪い。
1発打ち負かしてやろうと媒介石に手をやった瞬間だった。私の首に何かが強く巻き付き、利き手を握られた。
辛うじて息はできるけれどかなり苦しい。それ位の強さで締め付けられる首に顔を近づけリゼルグは私の腕を折れそうな位、握りしめている。
「リリカ、どういう事。ボクに言ったあの話は嘘だと言うのか!!」
「ぐっ、あ、あ、あたしは、そんなつもりじゃな……いっ!!」
首も、腕ももう死ぬかってくらい強く締められた。
ヤバいコイツ大分ピキって判別がつかなくなってやがる。このままだと殺される……!
朦朧とした中、まだ自由が利くほうの腕で護符を探る。ややこしくなってももう知らん、あとでちゃんと説明すりゃいい……
「やめろ」
葉の声がしたと思えば、どうやら暴走するリゼルグを止めてくれたらしい。
拘束が解かれ、一気に入り込む空気に咽せその場にへたり込む。
腰が抜けた。初めて、ここまで恐怖を感じた。ハオとは別次元の怖さ。余りの事過ぎて、キャパオーバーになってしまいガタガタ震えてると竜が背中を摩ってくれた。
「こ、怖かった……」
「大丈夫だ。リリカの姉貴…アンタがそういう奴じゃ無いって事は知ってる。大丈夫だ」
「リゼルグ、おまえ人の話聞けって。リリカはただハオに利用されてただけで、別にオイラ達に悪意があって近寄ったわけじゃぁねぇ。お前だってあん時聞いてただろ……で、お前らは何の用だ」
垂れた前髪を掻き分け葉が若干キレ気味に問いただすと、意外な反応が帰ってきた。
手下共は皆感心するかのように葉の顔を見つめているのである。
「何だよ」
「失敬。こうして改めて拝見すると、さすがご子孫だけはある。ハオ様に良く似てらっしゃる」
「……は?」
その場にいる皆が全員凍りついた。
ハオの子孫……?だから時たま表情にデジャブを感じてたのか。ガッテンがいった。けれど、どういう事だ??私が出会った時のハオはまだまだ小さい、葉位のガキだったぞ。
何百年と転生を繰り返して生き延びてるって聞いた事があるから、その中の子孫……なのか?
「あー、道理で似てると思った…!」
「緩すぎ!!」
敵味方関係なく突っ込んでしまった。流石は葉と言った所か。
抜けた腰も大分マシになってきたんで、立ち上がるがまだ握られた腕が痛い。こりゃ折れたな。リゼルグ、マジでやりやがった。
「ふぅ、楽しいお話はここで終わりだ。我々には早々に片付けねばならぬ仕事があってね。君達の大好きなハオ様からのご命令でな」
手下共がゆっくりと戦闘態勢に入り出す。
ほんと、最低最悪の大好きなハオ様からのご命令はロクなやつじゃぁねーんだろうな。
「葉様に試練を与えるために、仲間を殺せということなんだ」
私がポケットから護符と召喚用の石を取り出した瞬間だった。
布ずくめの男のその言葉が、開戦の合図だったらしい。
リゼルグに、敵は既に襲いかかっていた。