「ねぇ、リリカ、本当にあの時はごめんなさい」
「へぇっ?」
パッチへと続く道、ひたすら深淵部へと突き進む私たち一行は、各々の緊張からか静かに、歩みを止めず迷路のような道を進む。
ぜえぜえと息切らし敵をおぶって移動する竜がとっても気の毒だ。あんまりにもしんどそうなら適当に運べそうな奴らを召喚してなんとかフォローするか。
延々と続く地下への道へ降りてる途中、申し訳なさそうな顔をしたリゼルグがおずおずと話しかけてきた。腕の怪我についての謝罪だということだろうか。
だがご安心あれ私は非常に元気だ。怪我した部位は若干痛むが、まだ平気。
しかしリゼルグは紳士的で優しい少年だから、どうあろうと心配なんだろう。
「うーん、ちょっと痛えけど気にすことなんかないない!」
「……腕だけじゃなくて、クビも跡が残りそうだね…女の子なのに……ごめんなさい」
「そ、そんな事言うなよ。照れくさいぞ」
「もし、何かあったらボクが責任取らないとね。フフ」
……全く、こいつはなんてキザな野郎なんだろうか。
思わず変に照れてしまう。やめろやめろ!
大人をからかうのはダメだぞ!
「あ、あん時はさ、ハオの関連する事だったから頭に血が登ったんでしょ。これからは本戦が始まるから、リゼルグから受けた以上の怪我なんて日常茶飯事になるから気にすんな!な?」
「……そっか」
「そ、そんな気にすんなってば。ほらほら腕もこーんな元気!」
ぶんぶんと振り回すと、やっぱりまだ鈍い痛みが走る。けどこれ以上心配だとか、罪悪感を持たれるのはもっと嫌なので痩せ我慢をする。
なんかリゼルグ、例のX-LAWSとかいう奴らが現れてからというもののちょっと様子がおかしい。
多分色々と彼なりに考えが有るんだろうしそこまで踏み込むつもりは無いし、別に鼻につく奴らだけどアイツらもハオに人生をめちゃくちゃにされた人々の集まりと言っていた。
だからこそこっちはなにも言えない。
だから、リゼルグにもどう声を掛けていいのか、分からない。
「リリカは、葉君のことどう思ってるの?」
「えっ、あぁ、うーん……まぁ割と気の合う奴だなぁとは思ってるよ。リゼルグは違う?」
「…………ボクは、怖い」
「怖い?」
「彼のあの朗らかさが、怖い」
「……」
「自分が自分じゃなくなるみたいだ」
かぼそい声で、前を歩く皆に聞こえない位の小ささで呟く彼は、何か大きな葛藤に苛まれてる様だった。
うーん、またこのダウナー気質な子は扱いが難しい。
きっと多感な年頃故の、自己の塊がまだ未成熟だからこうして悩んでるんだろうな。自分も未だにその部分があるから人のこと言えねーけど。
「なんかさ、他人事かもしれんけどよ。自分の本来の目的を忘れないで、やりたいようにすりゃいいんだよ。周りに迷惑かけない程度にな」
「そっ、か」
くそっ、こういうのはどうも苦手だ。
対人経験がやっとこさ最近になって出来始めたもんで、こうした上っ面みたいな事しか言えない自分が恥ずかしい。
もう少ししっかりと彼を勇気づけることを言いたいが、如何せん語彙力だとか、気遣いが出来ん私にはこれが精一杯だった。