「おいみろよ!すげぇな。オラクルベルにつけてクール度アップストラップとか売ってる!」
「こっちには面白そうなお面があるぞ葉!買ったら呪われそうなデザイン!」
「おおっ、それも良いなぁ」
「…アイツら、呑気そうだな」
「葉のダンナは土産物とかには目がないからなぁ。リリカの姉貴もそういうのが好きなんだろ」
竜のリゼルグ探しに付き合うがてら、選手村を散策していたら葉がフラフラと土産物屋に入っていった。
…実は私はこういうお土産とか、買ったりした事が無くてちょっと気になってたからつい釣られて入ってしまった。店内には噂のドラゴンが巻きついてる剣とか売ってるもんだから、楽しくなって色々と物色してしまう。
ホロホロと竜は興味が無いのか、表の方で突っ立ってなにやら喋ってる。
……こういう雑貨は面白いから一緒に見ればいいのに。
ま、価値観は人それぞれか。
店の入口の近くになにやら面白そうな伝統工芸っぽい品があるもんだから、それを手に取って買うか買わないか吟味していた所、突然何者かによって奪い取られた。
「な、なんだぁ…!?人が見てるもん取りやがっ……うっわ、お前かよ」
「随分悠長な事をしているな。これから本戦というのに全く緊張感がない女だ。本当に戦う気があるのか」
見知ったトンガリ頭がこちらを睨みつけていた。
意外な場所での再開で驚き思わず体が跳ねる。
…つーか会って早々なんで私こんなにめちゃくちゃに言われてんだよ。土産物屋で物色してて悪いかこの野郎。
「た、戦う気と購買意欲はちげーよ!!もう、取ったやつ返して!買うんだから!」
「……こんな物を買うのか。以前から薄々と感じてはいたが、貴様センスが全くないな」
「ひっでーなぁ。てかさぁ、お前今までどこ行ってたんだよ」
「フン、ちょっとした敵状視察だ。しかし大した奴は居なかったな。無駄足だった」
つまりはお散歩してたって事か。
ボロクソに私の感性を貶した蓮は何も言わず取った商品を投げつけ葉に絡みに行く。
店の物投げんなよ…育ちが知れるなぁ。全く。
……育ち関連は私も人のこと言えねーけど。
葉のマイペースさにキレる蓮を横目で見ながら、会計を済まそうとレジに品物を置いたと同時に、隣からよく分からない骨のストラップが置かれる。
突然の事で驚き真横を見ると見知らぬ女の子が立っていた。
……だれ?
「このストラップ、良いわね」
「…………??」
「何突っ立ってるの、会計済ませなさいよ」
「えっ?はぁ?私が払うのか?」
「当たり前でしょ」
「???えっ、誰?」
「あんたこそ誰なの」
私は変な攻撃でも受けたのか。
全く会話が噛み合ってない。
今の状況を冷静に纏めろ、えっと、隣にいる女の子は知らない子だ。そして相手も私を知らない。
なのにこのよく分からないストラップを買えと言う。
…………駄目だ、総括しても全くなぜその流れになるのかわからない。
「アンナ!!380ドルのやつを人に買わせるのは駄目だぞ!」
「ええっ、そっちかよ!!?てかアンナ?!ええっ、………………?????」
おかしな様子に気づいた葉が酷く血相を変えてこちらに駆け寄る。
さっきのヘンテコなやり取りで脳の処理がバグってきた。
アンナってだれ?この子の名前か??
もう訳が分からん!多分私がロボットならショートして煙がでてる。
「お、おかみ!!どうしてここに!?」
「葉を強くするためよ」
「何だと?」
「あんたって人は本当に世話が焼けるんだから。ろくに服も洗濯してないだろうし、その便所サンダルでこんなところにまで来て……そんなあんただから、強くなってもらわないと困るの」
「いや、待てよ!!えぇっ、皆この子知ってんのかよ。誰??!」
「あー…そういやリリカは知らなかったか」
この場にいる皆は知ってたらしく、フツーに話してるのにアウェイしか感じない。
戸惑う私の様子をやっと気づいた葉がバツが悪そうに頬を掻きながらぼそぼそと話し始めた。
「前に話しただろ、オイラに許嫁が居るって」
「あー、そんな話もしてたな」
「その許嫁が…」
「あたしよ」
「なるほど」
「わかってねーだろお前」
「うん、半分くらいしかわかんない」
ホロホロの突っ込みに応えるしか今の私には出来ない。
目の前の堂々とした女の子が、あのウワサの許嫁ちゃんってか。
なんでここに居るんだ。もう考えが追いついてない。
「……まぁ何だ、アンナ。こんな所で話すのもなんだしオイラの宿舎でも来いよ」
「そうね、伝えたいこともあるから。…で、その前に。あんた、これ買っときなさいよ」
アンナと呼ばれる女の子は、そう言ってそそくさと店を出た。マジかよ、私が買うのか。