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「なんだよー、リリカ…でいいんだっけ?辛気臭い顔して」
「好きに呼べー…お通夜レベルでテンション下がってるからもう放っておいて。死にたい。そして殺したい。あのクソッタレ野郎を」
「ぶ、物騒だなぁ」

あの最悪の出来事の後、鼻につく捨て台詞を吐いてストレスの種である蓮はどこかに行ってしまった。
置いていかれた私らはどうする事も出来ず、結局葉に付いて宿舎まで戻る事にした。
あれからたった数十分しか経ってないのに心做しか頬がこけてクマができた気がする。それくらい荒んだ気持ちで一杯だ。

「殺したいまではいかねぇが俺もはらわた煮えくり返りそうだ…」
「分かる。本当ムカつくよなぁ。嫌な野郎と知り合って今更後悔してる」
「そんなカリカリすんなよ!もう決まった事だから受け入れようぜ!あっ、今からオレがブルーな気持ちを吹っ飛ばすユニークギャグを…」
「うるせえなぁ。俺ぁあのトンガリのせいで余裕ねーんだよ。お前の相手してられっか」
「んだとコラ、てめぇそれがチームメイトへの態度かよ!」
「あ゛ー!!!!もう!!騒ぐなよ!!蓮より先にお前らを蜂の巣にすんぞオラ!」
「まん太ァ?!?」
「……マンタ?」

媒介を取り出したタイミングと同時に、葉の叫び声が聞こえた。
マンタ??なにそれ。
選手村の真っ直ぐに続く一本道の路地の向こうに、ぬいぐるみのようなものを膝に乗せた車いす男が向かってきている。
なにあれ怖い。

「よ、葉くん…ひさしぶり」
「ぎゃっ、ぬいぐるみが喋った!!!!……あっ、違う、人だわあれ」
「ぼっ、ぼくがぬいぐるみだって!?」
「あっは!!面白い。さて、そちらの2人を除いて……超お久しブリですネ」
「ファウスト[世……!」
「いやぁ、これまた」
「わああああ!!!!なんだあれ!骨犬!!!」

物々しい男の雰囲気と横に携える骨でできた犬に驚いたチョコラブが近くにいたホロホロに抱きついていた。
至近距離で叫ばれて可哀想。
騒ぐ2人を眺めて目の前の幸薄ステータスに全振りしてそうな車いす男はまた楽しそうに笑う。
アンナちゃんが名前っぽいのを呼んでいたし、葉達に挨拶してたから知り合いなんだろう。
……こいつらの知り合い変なやつらばっかりだな!!!

「君のところは相も変わらず賑やかそうで羨ましい限りです」
「あ、あぁ。つうかお前なんでまん太持ってんだよ」
「彼とは偶然会っただけですよ。出会ったと思ったら気を失ってしまったのでこうして運んでいたんです。葉くん。君に会えて良かった。ぼくもちょうど用事が君にあってね」
「用?まさか復讐だなんて言うんじゃないでしょうね」
「ふ、復讐?お前何したんだよ」
「いや、予選でちょっと…な」
「あぁ…なるほど」

ばつが悪そうに濁す葉の言葉に察した。
予選でこの辛気臭い野郎と知り合うか対峙するかして、恨み事を買うようなことをしてしまった。と解釈していいのか。
まあこの目の前の男は出で立ちが不気味だ。
簡単なことで恨んだり呪ったり出来そうで怖い。

「復讐でエリザが戻ってくるなら何回だってしてやる。ぼくはただエリザとおしゃべりして、ただ手を取って踊りたかった。それだけのためにぼくはシャーマンになってこの大会に参加した」
「何が言いたいのよ。ハッキリ言いなさい、ファウスト!」
「……では直球に。葉くん、僕とチームを組んでくれ」