SF本戦開始まであと2、3ヶ月。
納得はいってないがまぁチームは組めたからなんとか参戦資格はある。
特に期限が迫る懸案事項もないから、本戦までに軽く戦術とか、そういった勉強でもするか。
と思ったのが確か朝方だった筈。
選手に与えられた居室の机に向かってひたすら読み書きをしていたらいつの間にか日が沈みかなり遅い時間になっていた。
そろそろ切り上げて寝なければ。でもなんか眠くない、かと言ってこのまま作業を続ける集中力もない。
……散歩でもするか。夜に出歩いたことあんまねーし。
気分転換に丁度いい。そそくさと準備を終えると宿舎を後にした。
外に出て、選手村の中心部の方を見遣ると神々しい光を放つグレートスピリッツが聳えている。
……これが、シャーマンキングになると手に入れられるのか。あんな馬鹿でかい精霊を、果たして使役することが出来るのだろうか。
「出来るに決まってるだろ。シャーマンの王たる者が手に余るとなれば名折れだ」
「…………嘘だろ」
「嘘?何が嘘かよく分からないけど、久しぶりだね。左門リリカ」
忘れもしない、恐怖の対象がなぜここに居る。
私を殺しに来たのか。…今の持ち物じゃこいつに対抗する事は非常に難しい。
気分転換にと思って外に出たのが悪かった。
最悪の自体が起きてしまった。
「ハオ…」
「はははっ、別にお前を殺すつもりなんてないさ。偶然見つけたから声を掛けただけだ」
「私は特にお前には用はない…。久方ぶりの再開で悪いが、失礼させてもらうぞ」
「…………まあ待ちなよ。キミ、兄貴を探してるんだろ?まだその望みはあるかい」
葉達と出会ったきっかけ。全ての始まりの言葉をまた再度持ち出すハオの真意は一体なんだ。
あぁ、私の激しい心臓の鼓動が耳障りだ。まだこいつは何もしていない、ただ会話しているだけというのに何故これほどまでに私は震えているんだろう。
「あ、あると言えば、お前はどうするんだ」
体の震えにより声が上擦る。
落ち着け、アイツからは殺気を感じない。大丈夫、ただ淡々と会話をすればいいんだ。
「…………僕は君に対して、酷いことをしたよ」
「どういう事だよ」
「お前を刺客にするために、使った」
「な、にを」
「お前の兄貴。ただの人間だったから、こいつの空かした腹すら満たせなかったけどね。はははっ」
なぜこうして余裕そうに笑うのだろう。一笑するのと同時に奴は自身の持ち霊を出す。
炎を纏い、邪悪さとどす黒くヒリついた空気を感じた瞬間、私は全ての限界を迎えた。
無理だ!!!もう、無理!!!!!
こいつともう話したくない、この場に居たくない。
召喚獣を出しては飛び乗り、脱兎の如くその場を逃げ出す。
宿舎に戻ろう!早く!!
「また会おう。怒りは自身を強くさせる」
遠くの方で聞こえたハオの言葉が深く心に刺さった。
奴の話は非常に情報量が乏しいのに、核心に突くことは言ってないのに。
…………こういう時ばっかり、変に聡い自身を恨む。
嘘だと言ってくれ。私の考えすぎであってくれ。
「兄さん、ハオに殺されたかもしれない」
ぼそりと、ひとつの可能性を呟く。
だから怒れと言うのか。
希望を踏みにじり、意図のわからない目的を果たすために私を使おうとしたから、きっかけ作りに兄を殺した奴に、怒れと。
怒りより前に、色々な気持ちがこみ上げてきて、それどころじゃねぇよ。