リゼルグは、X-LAWSに対してそこまで違和感を感じていた様子は無かったし、それどころか彼らの思想に同調していた。
だからこそこの子があの集団の仲間になると言っても、よく考えればおかしくはない。
引き止めたりする権利は私には無いし、それ以上に私はリゼルグとそこまで親密な仲でもないのに、何を言う事があるだろうか。
「…あの人達は、ボクと同じあのハオによって人生を狂わされた」
「……」
「ボクは、強くなりたい」
「…………何も、言える立場じゃねぇけどさ、いいんじゃねぇの。それで」
「やっぱりそう言うと思った。けどね、一つ問題があって、迷ってる」
「迷ってる?」
「…おかしな話だよね。不安なんだ」
確かに新しい事や今までと違う環境に飛び出すのは不安なのは分かる。
それを打ち明ける為に、私を頼ってくれたのだろうか。
…なんか申し訳ないな。多分リゼルグは急いでいるからこうして吐き出しに来た。けど今の私はタイミングが悪い事にまともな受けごたえができる自信が無い。
「君がとても落ち込んでる時に、言う事じゃないよね。ごめん…」
「いや…こっちこそすまん」
歯切れの悪い返事をしたからか、暫くお互い何も話す事が無くなった。
洞窟の中だからか、外より冷たい風が吹き込む。
こういう雰囲気は、やっぱり苦手だ。
双方がタイミングを伺いながら、数分経ちついに沈黙に耐えきれなくなったリゼルグがまたぽつぽつと喋り出した。
「リリカはお兄さんが殺されたって、確信してるの?」
「………本音を言うと、信じたくない。確信は出来かねてる」
「なら、そのわずかな希望に縋っちゃいなよ」
「えっ?」
「次にアイツと対峙した時に、本当の事を聞けばいいじゃないか。それまでは…自分があってほしいと思う事を信じない?」
「…なるほどな、変に嫌な可能性を杞憂するより希望に生きろってか」
余りにも頼り甲斐のあるアドバイスに少し驚いた。
まだこいつは12歳の子供だってのに、なんて大人な返答をしてくれるんだろう。
いや違う。私が、その……言い方は悪いが彼を見くびりすぎてた。
脆い部分ばかり注目して彼の精神は未熟だと勘違いしていた。
普通の時は至ってしっかりした子なんだ。
しっかし、希望に縋れか。
……リゼルグの優しい一言が冷水をぶっかけたみたいに、オーバーヒートした頭ん中の混乱を落ち着かせた。
ハオの真意は分からない。
なぜああして回りくどい鎌をかけたのかとか、そういったことはどう考えても答えが出せん。考えれば考えるほど坩堝に嵌る状況を断ち切ろうと提案したのは本当に助かる。
「はぁーっ……よし!!ありがとな、リゼルグ。お前のおかげで気持ちが切り替わった」
「ふふっ、まだ本調子じゃ無さそうだけど」
「そ、そういう事は言うなよ…いきなりいつものノリに戻すのは難しいつーの」
「でも、ちょっとは助けになって良かった」
「ちょっとどころかかなり助かった。……だから、次は私の番だな」
気付けに両頬を叩き、気持ちを切り替える。
こいつがしてくれた事を、しっかりと誠意を持って返す。
これ以上恥ずかしいマネをしてたまるか。年長者である私の名が廃るからな。
「よし、言ってみな。なにが引っかかってんだよ」
「……引っかかること、か。…ほんとはね、ボクも彼らのやることは違和感を感じる。けど、強くなるにはああした事も必要なのかもしれない」
「…なんでお前は強さに執着すんだ」
「だって、強くないとハオには勝てないからさ!」
仇を打つ為に、強さを求めると。
未来の事だから曖昧にしか思えんけど、きっと彼の望む力を得る過程やそのゴールに行き着いた経験はは大きな将来に繋がる。
そのポテンシャルを生かすか殺すかはリゼルグ次第だから、私は「強くなりたい」という一心で力を求めるのは悪いことじゃないと思う。
しかし引っかかる部分がある。こいつは葉の考えに近いものを持っている。
目的の為なら非情になる部分や、躊躇いなく闘いに持ち込む所はあるが、それでもまだまだ甘い。彼は優しい。だからこそ優しさと酷な部分がせめぎ合って壊れがちになるんだと思う。
そんな彼が果たして無茶苦茶な理由をつけてオーバーキルを繰り返すX-LAWSでやっていけるのか。
「強くなりたいって理由でX-LAWSに入るのはいいと思う。アンタがそうすれば目的が果たされると思ってるなら、そうした方がいい。けど」
「うん」
「多分、無駄な優しさで自分の首を締めると思う」