「葉のやることなすことが気になってねーか、お前」
「……なぜそう思ったの」
「この選手村に着く前に、お前は葉が怖いつってたろ。それは、お前の優しさで出来上がった倫理観が同調してたからだと思う。ハオに対する憎さとか、自身の苛烈な部分とか、自分の弱い部分とかが喧嘩しあってたからモヤってたんだろ」
私がそう言うと、リゼルグは分かりやすく固唾を飲んだ。
……余りにもストレート過ぎたか。
あーもう、本当につくづく言葉選びが下手くそな自分が嫌になる。
変に捉えられてないといいけど。
「じゃあ、ボクはどうしたらいい?!」
「提案だ、提案程度として捉えてくれ。お前は正解だと思う方に迷いなく行けばいい。進んじまえば、変な優しさや自分が弱いと思ってる部分も後からコントロールは効く…と思う」
「正解…」
「途中で無理そうだと思ったら何時でも周りに吐き出しゃいい。私や葉、なんなら竜も居るし、勿論他の奴らも居る、適当に辛いことを話せばちょっとは楽になるから」
「……」
人に話せば楽になる。さっきリゼルグが教えてくれた大切な事。
不器用にしか背中を押すことは出来ねーけど、ちょっとは力になれているだろうか。
こうして自身の気持ちを露わにすることは、葉達に会ってやっと最近になってできてきたから逆にこっちが変な事言ってねーか不安だ。
「X-LAWSに入ったら、今までのようにはいかねーし、自分の考えと全然異なった事を押し付けられる。けどそれはどこ行ったって一緒なんだよ。私だって嫌だけど無理矢理蓮のクソ野郎に付き合わされた」
「えぇっ、蓮君のチームに入ったの?」
「どんだけ駄々こねて嫌がっても暖簾に腕押し、強制加入させられた。…それと比べりゃ、お前はまだ選択できる余地がある」
「選択、かぁ」
「上手いこと自分の気持ちをコントロールしろ。そうすりゃ行きたい道に進んでも何とかやってけるさ」
失言でもしてしまったか。余りにも歯に衣着せぬ身勝手な物言いでやらかしたかと思いおそるおそる様子を伺おうとしたら、突然立ち上がるもんだから驚いた。
「リリカ、ありがとう。やっぱり君に相談して良かった!!」
「お…おう、そりゃよかった…」
「ボク、もう迷わない。決心したよ」
清々しく、まるで吹っ切れたような表情をしたリゼルグは優しく私の手を取り握りしめる。
なんか、こうして感謝されるのは慣れてないから照れ臭い。
「あ、あとさ」
「うん?」
「あんま、悩み事を自分一人で解決しようとすんなよ。…人に言えた義理じゃねーけどさ」
「…………ふふっ、わかった」
「何笑ってんだよ…」
「いや、変に照れるリリカが面白くて。ごめんね。…あぁ、そうそうこの事は誰にも言わないでほしいんだけど、大丈夫?」
「X-LAWSの事か?誰にも言うつもりはねーよ。特に竜が知ったらめんどくせぇし」
竜の話題を出すとリゼルグは少し困ったように笑った。
多分あいつの事だ、この話が耳に入った途端必死に説得しに行きそうだし、時が来るまで黙っておくのが吉だろうな。
しっかし、今日は最後の最後で色々とあった。
ここに来てから毎日立て続けにイベントが起こるもんだから疲れたな。
リゼルグと別れたらさっさと寝よう。きっと明日も何かトラブルや奇妙な出来事があるだろうから、それに備えるために。
夜空も月も見えない、グレートスピリッツが煌々と照らす村の一角で行われた秘密のやり取りは終わった。