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仲間の坊主に憑依させたペヨーテの攻撃は、苛烈極まる猛攻だった。
俊敏さをウリにするチョコラブも、狡猾な戦法に戸惑い反撃が出来ずひたすら受け身でなんとか凌いでいる。

「てめぇ!瀕死の、仮にも仲間を媒介にするなんざ!最低の野郎のする事だぜ!!」
「ほう、取り憑かれた奴らを攻撃するのではなく私を攻撃…か。君の中では「最高の野郎」のする事がこういう事なのか」
「!!チョコラブ、避け…」
「遅い」

チョコラブも何か察したらしく危険を告げた瞬間、ペヨーテから遠ざかろうとした。が、相手は早かった!
懐に忍ばせていた骨の人形が勢いよくあいつを殴りつけた。

「私の持霊が2体だけと思ったか。カラベラの人形に沢山の仲間達の霊を宿らせる」
「か、カラベラ…?」
「知らんのか。貴様のアイヌにも似たような文化は無いか…まぁ良い。カラベラはメキシコの死者の象徴。つまり奴はかつての仲間達と関わりの深い骨を媒介として戦うシャーマンだ」
「フ、フフフ!エレスコレクート!!君は本当に知見が深い!如何にも。私は死者と遊びし陽気なシャーマン。この2人も私にとっては肉の鎧を着た骨の媒介に過ぎん」

カタカタと骨の人形を揺らしている音がまるでこちらを嘲笑う声に聞こえる。
あの野郎、性根腐ってんな。
これ以上対面するだけで気分が悪くなるし、とっとと倒してスカッとしたい。
燻った怒りの炎に油を注ごうとしてるのか、ペヨーテはふざけた様子でギターを鳴らす。
弦の音で操っているのか、持霊に憑依された坊さん達が不思議な形をしたO.S.を振りかざしチョコラブを襲う。

「サボテン…?!!クソっ、そんなO.S.したって無駄だ。オレのシャフトでへし折ってやるぜ!!」
「馬鹿だなぁ。君は実に馬鹿だ。では死ね」

鬼の金棒みたいな棘の見た目に嫌な予感がした。
戦いの邪魔をして悪いがこの予感、的中したらチョコラブが死ぬ。あのメキシカン野郎の言葉通りに死ぬ!!

「オルトロス!!!」

四足の魔獣を大急ぎで召喚し、チョコラブを蹴り飛ばしたが、敵の攻撃は予想以上に激しかった。
あいつが立っていた所にサボテンの棘が弾丸のように飛び交い、私の使いは見事に貫かれ蜂の巣にされる。
ここまで損傷したら保ってられない、奴を攻撃から避けさせただけで役目を終えて消えていった…

「おい!!大丈夫か、チョコラブ!!」
「あ、あぁ…サンキュ…ゲホッ、だけどよ、次やる時はもうちょい優しく頼む、結構今のは……痛かったぜ」
「おぉ、一瞬の判断で仲間を無事助けるとは中々やるなぁセニョリータ(お嬢さん)!」

……けっ、何がお嬢さんだ。
こうして攻撃が避けられたってのに顔色1つ変えやしない。
まだ何かするつもりだ。2度目はもう無い、次は私達の助けが入る事がないような攻撃を仕掛けるだろう。
だからこそ何としても、早々に仕留めなきゃならん。

「さて、そこの口汚いセニョリータ、その召喚石……大丈夫かな?」
「はぁ?何言ってんだよおま……?!」

右手に握りしめた石がガラスのようにヒビ入り崩れていく、そしてその破片が何故か意志を持ったみたいに私の腕に突き刺さった!
な、何で!?何が起こった??!

「残念ながら、私は今のあなたより数倍は上手だ。巫力を使えば君の喚んだ獣のダメージを使い手に反映させることだって可能さ」
「……そんな事が」
「出来るのかって??出来るんだよ、私ならね。セニョリータ」

頭を重いもので殴られた気分だ。
嘘だろ、そんな反撃、聞いたことない。
こいつの言ってる事と、今起きたこのハプニングが偶然ではなくマジなら、私は今後召喚した使いが攻撃を受ける度そのダメージが還元されると。
どうすりゃいいんだ、無理だ、なんとかこの仕組みを打開しないと、私は何も出来ない。

「安心しろ、大丈夫だ。リリカ。後はオレが全部何とかしてやるからよ!!」

そう言ってチョコラブはまた操られた2人の相手をする。
けれども何でだ、何であいつは攻撃しないんだ。
やられるだけの状況にどう安心しろと言ってんだよ。

「馬鹿野郎、何やってんだよチョコラブ!さっさとアイツら倒さねえと何も出来ねえぞ!!」
「うるせえホロホロ!こいつらこれ以上やったらマジで死ぬんだよ!オレはオレなりの方法で、アイツらを倒す…!!だってオレはもう、誰も人が死ぬとこなんて見たくねえんだよ」

何か強い信念を感じる言葉に、何も言えなくなる。
人が死ぬって事に、こいつは何かとても重い気持ちを感じているんだろうか。
チョコラブは敵にぶん殴られて、遂にその場に倒れ込んだ。